ノウハウ

2014年3月30日 (日)

チャタリングのはなし

チャタリングのはなしとは

チャタリング[chattering]とは可動接点などが接触状態になる際に、微細な非常に速い機械的振動を起こす現象のことである。(Wikiより)
特にスイッチ等機械的接点の ON OFF 時に接点がバウンドしてくっついたり離れたりするので、マイコン等で読み取る場合、何もしないで読み込むと「 ONしたつもりが、チャタリングした OFF タイミングを読んでしまい、時々ONしない」などのトラブルが起きる。
 そこで、ハード屋さんは、読み込んだポートに 1000PF〜0.1µF 程度のコンデンサーをつけてチャタリングを除去します。ソフト屋さんはキーの状態を見るのに数十mSおきにチェックして、OFF-> ON 時は2回連続して ON になった時に ONと確定する、ON-> OFF 時は2回続けて OFF で確定する、などの工夫でチャタリングを防いでいます。
ハード的には

それで、実際どのくらいの、チャタリングが起きているのかを、色々なスイッチで調べてみました。
まずはタクトスイッチ


Tacton_2 マイコン制御でよく使うだけあって、ONのチャタリングは短い時間で終了します。
Tactoff_2


OFF は300µS  程度に数回バウンドするようです。離したときに板バネが暴れるのでしょうか?
次にアナログ的に信号を制御するのによく使うトグルスイッチ
Toggleon
やはりマイコン用に作られている訳ではないので、ON時は盛大にチャタリングが出ます。300µSを過ぎても安定していない感じですね。
Toggleoff
OFFはまあまです。たまにこのようなチャタリングがあるくらい。シーソー的に動く接点の動作の違いで、OFF時にはわりとスムーズに離れるようです。
次はプッシュスイッチ
Pushon 盛大にチャタリングが出ます。接点がスライドしながら接触するのだろうと考えられます。細かなチャタリングが特徴です。

Pushoff
OFFも激しいですね。一度離れそうになってまた結構確実な ON 状態になるあたりが特徴的です。
次はスライドスイッチ
Slideon
細かくチャタリングするのはプッシュスイッチと似ています。わざとゆっくりスライドさせたので、このような波形ですが、早く操作すればもうちょっとチャタリング時間は短いかも知れません。
Slideoff
OFF もけっこう暴れます。それでも 100µS程度なのですが、確実にチャタリングは起きます。
 以上見てみると、よほどゆっくり操作しなければ、ほぼ 1mS 以下でチャタリングは収束してしまうものと思われます。数mS おきに読み込んで、2度読み確認するなどの工夫で問題無く読めるかと思います。最近はスイッチもマトリックス状接続にして多くのキーを読む場合も増えたので、ハード的対策はあまりしなくなったようですが、「遠くのスイッチをケーブルで引っ張ってきて読みたい」などの用途には、ノイズ除去のためのコンデンサーを入れたりするのも有効でしょう。

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2014年3月14日 (金)

OPアンプは理想アンプ?

OPアンプは理想アンプ?とは

OPアンプは入力抵抗や帰還抵抗でゲインが計算できて、また計算どおりに動くのであまり考えずに使ってしまいますが、ちょっと高速な信号を扱う場合や、出力レベルが高くなったときにおかしな動きがトラブルになります。20140314_111157 本当に理想的なアンプなんでしょうか?
 よく使う単電源の OP AMP LM358 で見てみます。
ゲインを考える
 トランジスタも fT といってゲインが1になる周波数で高域特性を見ますが、OPアンプのゲインを見てみます。ゲイン 0dB は1MHzぐらいありますね。OP AMP 自体は最大 110dB 電圧増幅で 310000 倍ぐらいありますが、マイクアンプなどで欲張って 60dB ぐらいに設定すると、周波数特性は1KHzから高域はフラットでなくゲインが落ちてしまいます。ちょっとこもった音になってしまいますね。20140314_111217 音楽に問題無い 10KHz 程度まで出したいのならば、ゲインは 40dB 程度に抑えなくてはなりません。マイク入力が 10mV とすると 100倍なので 1V ぐらいまで増幅できます。
出力レベルを考える
 さらに出力レベルをチェックしてみましょう。右図はゲイン 100倍の時の出力スイングレベルの周波数特性です。電源が +15Vにときに 5KHzぐらいまではフルスイングの 14V p-p 程度は出ていますが、10KHzでは 10Vp-p に落ちてしまいます。これは出力を大きくスイングする時のトランジスタの ON/OFF に時間がかかるためで、出力電圧を大きくとりたい場合は、高速なトランジスターを使った OPアンプで無いと改善できません。
デジタル回路に使ったら
通常は10KHz程度の信号はOP AMPで増幅できるので、パルスアンプなどの高周波信号を高周波検波 IC で検出して OP アンプで数倍に増幅、スイッチするなどの応用は簡単に考えられます。例えば 周期 10mS パルス幅 100uS ぐらいならば、 普通のOP AMPで十分かと思います。20140314_111208
 過去にパルスアンプの出力をサンプリングして出力レベルを制限しようと回路を組みましたが、パルス幅が 1mS など広いときには良いのですが、パルス幅が狭くなるとパワーが出過ぎるのです。よく調べると、立ち上がりが50uSほどなだらかなので、その分サンプリングのレベルが少なくなっていたのでした。 使っていたのは普通のオーディオ用のOP AMPだったので、高速のものに変えて数 uS に抑えました。
 1V以下の信号では気にならない出力レベルも、5V程度振らせる場合には OP AMPの性能の確認が重要ですね。

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2013年10月15日 (火)

ビアの抵抗

ビアの抵抗とは
ビアとはプリント基板に穴を空けて、表面と裏面のパターンをスルーホールで繋ぐ、[スルーホールビア]のことですが、以前ビアのインダクタンスについて書きました。
今回はビアの抵抗値について考えてみます。

<-- クリックでAMAZONに移動します。

 というのはトラ技の2013 年11月号、特集はデジタル時代のMyラジオ製作といって、半導体チューナーや DSP を使ったデジタル関連の記事ですが、その後ろに「ヘッドホン用USB-D-Aコンバーター・アンプの製作」の記事にプリントパターンの抵抗値やインダクタンスなど基板設計のノウハウが書かれていたからです。
その中の記事でビアの抵抗値が書かれていました。Via_3 右図のようにドリル径を 2r0 ,スルーホールメッキ後の内径を 2r1として高さ(基板の厚さ)をh とすると抵抗値 Rv は 右の式のように求められるとのことです。
σは銅の導電率 5.8x 10 ^7 [S/m] で他の単位は mm です。
例として 0.5mm穴メッキが 20μm で、板厚 1.6mm では
Rv = 0.9mΩ となるそうです。
比較のため穴径が 0.8mm では Rv =0.56mΩ
となります。穴径が 1mmならば Rv =0.45mΩとあまり下がってきませんね。 1mm穴にするぐらいならば、0.5mmを2つ空けた方が良さそうです。
この記事にはよく言われる、プリントパターン 1A ....1mm幅のはなしが書かれていますが、これは昔、温度上昇を 4℃/S に抑えることだったようで、それに合わせると記事中の計算ではビアも0.5mmで 5.4℃/S なので0.5mmφ ... 1Aぐらいのようです。 1スルホール 1A ってのもだいたい合ってたかな?
 しかしながら、筆者は現代は高速信号の時代なので、1mm/1A を妄信せずにきちんと信号を見極め、シミュレターなどで検討することを勧めていますね。

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2013年10月10日 (木)

半田ごての絶縁について

半田ごての絶縁とは

普通にアナログの低い周波数のデバイスを扱っている頃は、半田付けにはあまり気を使わなかったけれども、CMOSのゲートICなどが出て来た頃、「静電気」に対する注意はずいぶん生産工場でも言われて来ました。
ハード的には
最近のCMOS デバイスは、ゲートICだったり、オペアンプだったりしますが、入力端子には必ず電源や GND への保護ダイオードが入っているので、静電気やリーク電流等にはそれほど気にせず、半田付けしてきました。Fx951しかしながら、前職では数GHz の高周波デバイスを扱う会社だったので、半田ごてはステーションタイプの箱から半田ごてまで線がでていて、半田こての先をつける場所に合わせて、細いものや太いものに変えられるタイプのものを使っていました。
 どうしてそんなものを使っているかというと、
1)数GHz を増幅する高周波デバイスは、MOS構造のゲートでも保護ダイオードなどは入っていないので、静電気やこて先の誘導電圧やリーク電流で破壊される場合があるから。
こて先のGNDがしっかり取れている必要があり、AC電源からの誘導もないこてが必要です。
2)スルホールビア等はサーマル対策で作ってない純粋のスルーホールなので、GND穴近くになど半田付けする場合大きなこての容量が必要になる。
3)チップ部品等を外したりする場合、2本同時に使うと便利。
などの理由があって、導入されていました。
 このこて先電位の注意を怠ると....
高周波のSMD Powerデバイス( 100mWクラス)を修理して交換しても、ちっとも直らない。何度も新品に交換してもゲートがショートしてソースと0Ωになったまま...
なんてことがあって、実は半田ごてがリークしていて、新品のデバイスを半田つけた途端にゲートに電圧がかかり、壊していた... なんてトラブルもあったぐらいです。
自作ではそんなに気にならないかも知れませんが、一度DC電源のGNDかマイナス端子と半田ごてのこて先との電圧を AC レンジのテスターで計ってみるといいかも知れません。いままでトラブルなかったのがラッキーだったりして...
これから静電気の増える冬場に入りますので...

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2013年7月 1日 (月)

強制空冷のはなし

強制空冷とは

パソコンのCPUとかRFリニアアンプなど発熱する素子やモジュールを冷やす場合、ヒートシンクだけで冷やす「自然空冷」とファンで風をあてて冷やす「強制空冷」があります。僅かな温度変化も嫌う分野では30度程度の温水をつかった「水冷」もあります。
ハード的にはHeatshinkfan_image
比較的ポピュラーなのは、デスクトップパソコンでCPUの上に乗っている剣山のようなヒートシンクを上から風を当てるタイプの冷却方法です。
風をヒートシンクにぶつけるので、吸い込む空気の温度が比較的低く、はき出した空気が戻らないように、ケース内の熱気をはき出すファンも必要です。
これは比較的発熱部分が偏っているために出来るので、冷却のヒートシンク自体も小さめです。しかしながらFANが止まると急激に温度が上昇してしまうのでCPUには自ら温度センサーを内蔵して、高温時には動作を停止するなどの保護をしています。Heatshinkfan_d
 大きなモジュールのRFアンプなどは、デバイス1つ1つに放熱板を付けているのでなく、大きなヒートシンクにAMPモジュールを取り付け、ヒートシンク全体の温度上昇をFANで強制空冷して冷やします。大きな熱量を発生する場合、できるだけ低い温度の空気をとり入れる必要があるので、フロント側に吸気FANを設けるのが一般的です。
さらには熱せられた空気を効率よく排出するには、排出側にもFANが必須で、パソコンの冷却法で言うと、筐体の前から後ろに向かって空気を流す、現在の MAc Pro みたいな方式が優れています。
ソフト的には20130701_193609
このような方式で効率よく空気を冷やす方法で、安価なRFアンプでは、四角い空洞を持つヒートシンクにFANをつけてモジュールをその外側に取り付けるデザインがコスト的にも優れていますので、よく見られます。
 このたびチラ見せで発表された、新MAC-Pro も円筒形の筐体の中に空洞を持つヒートシンクを配してその周辺に発熱素子を配置するという構造です。昔のPowerMAC-G4 Cube は自然空冷で失敗しましたが、今回はファンを使った強制空冷のようですね。
20130701_194125

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2013年4月 5日 (金)

プリント基板を作るはなし

プリント基板を作るとは

 プリント基板はCADでデーターを作って、基板屋さんに渡す...という方法がポピュラーですが、ちょっとした実験や1台限りの基板ではどうしても手作りということになります。
 昔はエポキシ基板にマジックでパターンを書いて塩化第2鉄の液でエッチングして 50MHzAM/FMトランシーバーを作ったこともありますが、今回高周波の実験するのに簡単な方法を紹介します。特にパワーアンプ等、ヒートシンクにデバイスを取り付けて基板もヒートシンクにベタ付けするときは大変簡単に作れて便利です。Pcb3make
1)まず基板に作成したいパターンを図面から転写します。実寸にプリントした図面を基板に張り付け、カッターナイフ等で傷をつけるか、カーボン紙等があればボールペン等でなぞって転写します。
2)移したパターンにそってカッターナイフで、銅箔の厚さまで切り取ります。銅箔が不要な部分は切りすぎても問題ありませんが、残す部分までカッターの刃がいかないよう注意して切り込みます。
3)30W以上の半田ごてで(出来れば温度調節機能のあるもの)に細いこて先をつけて、銅箔をはがす部分を上からこするようにして暖めます。すると銅箔と基板との接着剤が熱で弱くなり、銅箔が反るようにしてはがれます。
 ピンセットでひっぱたり、カッターナイフで切り込みを追加する等して、銅箔をすべてはがします。
4)ネジ止めする穴や、挿入部品を入れる穴をあけた後、ステンレスウール等で基板を磨きます。こすることでカッターナイフで銅箔にバリが出来たりした部分を平らにして、半田時にショートしないようにします。
ソフト的には
 この方法でパターンを作る場合ちょっとしたコツがあります。それはパターンに曲線をあまり使わず、直線や、アールでなく45°角カットなどのパターンを設計することです。さらに高周波で高い周波数の場合は、テフロン両面基板を 50Ωなどのパターン幅になるようにカットしてこの基板上に貼付けます。貼付けるには両側を半田メッキしてペーストをつけて半田を横から吸わせるように接着面に流し込みます。さらに数GHZ以上の高い周波数ではデバイスをつける部分に空けた穴の端面に銅箔テープ等を接着してインピーダンスを下げ、さらにスルーホールになる放熱板に基板を取り付けるGNDビスをデバイス周りや、入出力付近に多数設けます。
Pcb

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2013年1月23日 (水)

静電保護のはなし

静電保護とはVaristor_arrester

静電気による高電圧が印加することによって、デバイスが破壊されたり、CPUが暴走したり、リセットがかかったりする障害から保護する役割です。
高周波では入力保護のはなしでアンテナからの保護を書きました。
 今回は代表的なバリスタ[Varistor]とアレスタ[Arrester]について考えてみます。
ますバリスターについて(Wikiより)
この素子は非直線性抵抗特性を持つ半導体セラミックスを2枚の電極ではさんだ構造を持つ。 セラミックコンデンサに類似した構造であり、セラミックコンデンサの誘電体セラミックスを半導体セラミックスで置き換えたものと言ってよい。 形態もセラミックコンデンサと同様にディスク型および積層チップ型がある。
特性としては右図のようにツェナーダイオードを向かい合わせに繋げたような構造になります。動作していない電圧では電極が積層セラミックコンデンサーのようにある程度の容量をもっています。通常 数PF〜 数10PF
しかしながら、クリップするカーブは緩やかで、ツェナーダイオードのような急峻な特性ではなく、電圧を超えると徐々に電流が増えてゆく特性を持っています。もちろん片方がツェナーダイオードとして動作している時は反対側は通常のダイオードのように動作しています。
 代表的な製品としてSMD部品ではKOAのチップバリスタ ではバリスタ電圧は 12Vの 0603製品から 6〜 30V程度の 3216製品(サージ電流 50A程度)から 9〜 100V程度の 5750サイズ (サージ電流 1000A程度)のものまであります。これら通常のバリスタは主にDC〜数 MHzの信号ラインを想定して、制御信号やオーディオ出力ケーブルなどバリスタ追加による浮遊容量増加が無視出来る用途です。
最近ではポリマーを使った小型の保護素子も出てきました。

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 携帯電話のアンテナ端子などこれら付加容量が無視出来ない用途では積層させるのではなく、一対の非常に狭い間隔で金属を向かい合わせてアーク放電させて高電圧を逃がす構造として造られた、 MURATAの超低端子間容量のESD保護素子 など1005サイズの小型で容量が 0.05PFなどという製品も出てきました。(電極ギャップを使うので数10Vというバリスタ電圧はできませんので、だいたいピークで数100V程度の保護となります。
しかしながら静電気の電圧は試験時でも 1KV程度の電圧を 150PFのコンデンサーにチャージさせ330Ωほどの抵抗で印加するので、その電圧から比べたらかなり電圧を制限出来ていると考えられます。
 また、通常のバリスタはサージ電流が流れると半導体セラミックスが劣化しするので、回数による寿命がありますが、上記素子はそれがないのがメリットでもあります。

高周波で雷に対する保護は?
20130123_103654
携帯基地局のアンテナ等、雷による誘導電圧、サージノイズに対する保護は、ガス等の放電を利用した大電流保護のアレスタが有利です。両端に比較的大きな金属端子をもったセラミックケースの中にガスが入っている構造です。チップタイプもありますが、1KAもの大きなサージ電流を扱うのでSMD型でもあまり小型のものはありませんが、静電容量が 0.3PF程度で、サージ耐量が500A取れるOKAYA3216サイズ や、同じくらいの大きさのリードタイプのものも出てきました。
豊富な種類があるので選ぶのに迷うほどですが、重要な点はこのデバイスの端子にはピークで 1KA程度流れるということです。ですから、配線のパターンはGND側は出来るだけ幅広くかつGND端子(ネジ)に近い配置にする。信号側は出来るだけ入力の端子に近いところに配置するなどの注意が必要ですね。
Gdt

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2012年12月12日 (水)

ICパッケージのはなし

ICパッケージとはNs

ICのパッケージについては、昔は DIP が標準で 2.54mm ピッチで幅が、7.62mmか 10.16mm かなんて違いを気にするだけで良かったのですが、最近の表面実装パッケージでは小型化によってハーフピッチの 1.25mmピッチはともかく、その半分の 0.65mm ピッチまであるのでICの型番は末尾まで気にしないといけない時代になりました。昔はそのままか A がつくのは DIP パッケージ、 F がつけばフラットパッケージぐらいで楽でしたが、最近はその僅かな末尾の差で実装できなかったりします。
日本はほぼ規格化されている?
かどうかわかりませんが、 Renasas などは 1.27mm ピッチを SOP と呼んで、この半分のピッチは TSSOP と呼んでいます。

Dw

このあたりは国際的にも同じようです。
SOP は Texas Instruments では NS パッケージがあり、本体の幅が約 5.3mm で端子の端まで 7.8mm という大きさです。
昔の ゲートIC のSOP ICパッケージはほとんどこの大きさだったのですが、海外製には例外があります。
それは TI では DW  パッケージと呼んでいますが、ピッチ 1.27mm は同じなのですが、本体幅が 7.5mmと広く、端子端まで 10mm もあります。かつて海外から ICを SOP サイズといって買ったらこの サイズが入荷し、試作だったので足を根元から縦に曲げて手半田でつけた悲しい思い出があります。
さらに 0.65mmピッチでも

Tssop

混戦しています。
右の図は TSSOP というパッケージで、ピッチは 0.65mm 本体サイズは 4.4mm 端子の端まで 6.4mm と結構標準的なサイズです。
 しかしながら、これと対抗するのは アナログデバイスのパッケージで、 RM-8 と呼ばれるパッケージです。
 なぜ困るかというと、このサイズは Hittite や Linear などRFで使っているアンプスイッチのMS8というサイズも同じ大きさなので、どうもこちらのほうがアナログ屋さんにとっては、普通のサイズのような気がしてしまうからです。
Rm8
右の図が RM-8 パッケージですが、本体の幅は 3mm と小さく、端子の端までは 4.9mm と上記 TSSOP よりも1.5mm も短いのが難点です。
ピッチは合っているのに足が届かないで、パターンランドがちょっと大きければぎりぎり半田付けができたりします。
この大きさは、デジタルICでは MSOP と呼ばれ、(マイクロのMかな?)使っていますし、さらにはDBパッケージと呼ぶ、同じ 0.65mmピッチでありながら、 本体サイズ 5.3mm 端子端まで 7.8mm と TSSOPにくらべ、1.4mmも大きいパッケージなのです。幸いこれは 20Pin以上のパッケージになるようですが、これだけ多くの種類を抱えていると、例えば秋月電子で売っているアナログデバイスの AD8616 についてそのパッケージ別の品番定義を見てみると、
いちばん小さい1個入りは AD8615AUJZ
2個入りのRM8サイズは    AD8616ARM
2個入りのR-8サイズは     AD8616AR
となっています。ここに ROHS 対応だと末尾に Z がつくなど、リール品は -REELがつくなど気が抜けませんね。
ソフト的には
かつてこの端子幅問題をクリアするために、パッド長を長めにした部品定義を行って量産に対応したりしましたが、半田量が増えて裏側でショートしやすいとか、結構大変でした。同じサイズのコンパチ品を確かめてから設計しないと、何かと後で迷惑かけそうですね。

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2012年10月27日 (土)

たどり着くまでのはなし

たどり着くまでとは

これは故スティーブジョブスの言葉ですが、全体は以下の通りです。
「何かの問題を解決しようとして、それに取り組み始めたとしよう。そこで真っ先に浮かんできた解決策は非常に複雑なものだ。そんな時、多くの人はそこで止まってしまう。しかし、その後も取り組みを続け、問題と接し続け、タマネギの皮をもう数枚はがしていくと、しばしば非常にエレガントでシンプルな解決方法にたどり着くことがある。多くの人々は、そこにたどり着くまでの時間やエネルギーを費やしていない」
以前「完成への努力について」で書きましたが、私も全くこのジョブズの言葉に共感しました。なかなかシンプルでエレガントな解決策というものはすぐに出てこないものです。しかしながら日常普段にそのことについて考えて、「もうこれでいいや」としないで、なんとかそこにたどり着くまで、時間とエネルギーを費やそうということなんです。非常にこだわりをもったカリスマだけがなせる技ではなかったのです。どれだけ情熱を持って物事を完成まで持っていくか...
そこに天才の執着があるのだろうと思います。
Steve

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2012年8月10日 (金)

プリント基板の熱収縮のはなし

プリント基板の熱収縮とは
 プリント基板も銅箔とガラスエポキシやテフロンなどの材料を使っていますので、熱によって僅かですが膨張したり,収縮します。今回は基板の大きさによって膨張・収縮する長さを考えてみます。
ハード的には
Pcb_b
 右の図のようにアルミシャーシーにプリント基板を取り付け、SMAなどのコネクタで基板上の信号をパターンとの半田付けで伝達する場合を考えてみます。
 プリント基板はガラスエポキシで転移温度 Tg(約 120℃)以下では膨張率が 70ppm/℃程度ですが、アルミの膨張率は 23.1ppm/℃程度でケースとなるアルミの方が伸び縮みが少ないです。その差約 50ppm/℃が歪みとなって現れますが、常温 25℃で検討して高温 75℃(+50℃)低温 -25℃(ー50℃)を考えてみます。どちらも温度差50℃なので、変化率は 50ppm/℃ x 50℃ = 2500ppm = 0.0025 となります。
かりに図のプリント基板を中央でのみしかねじ止めしなかったり、ねじ止めが効かない場合は、全長 50mm の基板では 50mm x 0.0025 = 0.125mm となり、ほぼ問題無い程度の収縮であると考えます。
 しかしながら、長いプリント基板で 400mm となった場合は、 400mm x 0.0025 = 1mmとなり、低温ではパターンをコネクタに半田付けする部分が離れてしまう恐れが出てきます。また、いずれにせよ半田部分が熱で大きく動くので,クラックが入ったりして不良になる原因となります。高い周波数では信号線が細いパターンであったりする場合には、パターン剥離が起こる可能性があります。
ソフト的には
 このように、基板の熱による膨張・収縮を考慮することで、コネクタ付近ではPCBをケースに2カ所ぐらいでねじ止めすることや、外部接合ラインに不要に長いパターンを作らない点など、特に大きな基板を設計する場合には注意すると良いでしょう。

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