謹賀新年 2024
新年明けましておめでとうございます。
今年最初は、デジタルアンプの話。
昨年書いた「ポータブルアンプを作ってみたはなし」で使ったデジタルアンプについて書いてみます。
デジタルアンプとはどういう物なのか?色々世間にはネット接続ストリーミング音楽再生コントロールアンプとかメディアサーバーなどデジタルコンテンツをデジタル的に保存・加工・再生出来るものがありますが、結局最終的には人間の耳に聞こえるようにアナログに変換してスピーカーやヘッドフォンを駆動しなければなりません。
どこまでデジタルにして、どこからアナログにするかということで構成はかわってきますが、
1) 昔のクラッシックオーディオでは、アナログレコードをプレーヤーでアナログの電気信号に変えた後、アナログコントロールアンプ→アナログパワーアンプ→スピーカーと流れる構成でした。
2) CDになったら、このプレーヤーまでがデジタルになって、デジタル信号を D/A コンバーターでアナログに変換して信号をコントロールアンプ以降に伝えていました。
3) iPod などデジタルプレーヤーはコントロールアンプまで DSP などを使って音質等も調整しながら、最終的に D/A コンバーターでアナログに変えて、パワーアンプでアナログ信号をイヤホンに伝えていました。
このようにデジタル化は進化していましたが、最後のスピーカーを駆動できるようなパワーアンプは音質を求めるならばアナログの増幅器を使わざるを得なかったし、大きなトランスや、大容量コンデンサー、大きなパワーが出る半導体とそれを放熱するヒートシンク、電源として安定に電力を供給できるトランスが必要でした。
今回考えるデジタルアンプは、この最終段のパワーアンプをデジタル化したものです。デジタルとは1と0で表現する信号ですが、どうしてデジタル化するのでしょうか?それはデジタル信号を振幅方向にアナログ化するいわゆるマルチビットD/A ではなく、1Bit D/A と呼ばれる PWM(Pulse Width Modulation )と呼ばれる技術を使った D/A の手法です。
下記は以前使ったデジタルアンプ IC TPA3111D の内部ブロックですが、このICはデジタルをデジタルのまま変換するのでなく、汎用性をもたせるべくアナログ信号を PWM 信号に変えて、それで出力段 MOS-FET をドライブしています。
図中の左上部分がアナログ入力・増幅部で中央上の PWM Logic の前のコンパレーターで内部で生成したのこぎり波のレベルと比較して入力レベルが上回った・下まわったのを検出してそのレベルに従った Duty のパルスを生成しています。このパルスの周波数は音声信号をはるかに上回る 300KHz 近い信号なので、簡単なローパスフィルターで落とすことが可能になり、一気に小型化が可能になりました。
PWM信号ですから、中間の電圧レベルは必要なく、FET は単純に高速 ON-OFFできるだけなので、損失も少なく大きなヒートシンクが不要なものも多くあります。この ICは 12V や 24V の電圧を ON/OFF してPWM信号を出力します。
上記信号は下側紫が FET 出力直後の PWM 波形、上の黄色はフィルタ後のスピーカー出力波形です。波形では PWM波形が残ってリップルのようになっていますが、280KHzという高い周波数なのでスピーカー自体駆動できないので無視できるレベルです。
こちらはレベルの低い時の波形です。
ただ、PWM波形は直線性やジッター(基本クロックの安定性)で性能が左右されますので、パルス幅が小さいときや最大に近くなった場合など変換誤差が大きくなる場合があります。この IC では BTL 接続を行って、無信号時は2つの出力を 50% にしておき、小信号でも 50%からの差になるので誤差が出にくいエリアを使うような使い方をしていますので、このような IC には BTL 接続は有用かと考えます。
ICの性能では THD は 0.1% 以下と優秀です。よくこのようなアンプを D級とか言われますが、結局デジタル信号をどこまで持って来てアナログにするかという発想では、D/A コンバーター内蔵のアンプと考えれば良いかと思います。効率が良く発熱が少ないので、最近の PA のアンプなどはスイッチング電源をデジタルアンプに繋いだものが増えていますね。
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