TTL レベルのはなし ふたたび
そもそも、 TTL とは Transistor-Transistor-Logic(図 右側) の略で、トランジスタで組み合わせているロジックICから始まったもので、その前に DTL Diode-Transistor-Logic ( 図 左側 )なるものがありました。初期のロジック IC はほとんど 5V 電源でしたが、まずその入力特性を考えて見ます。
1) DTL
この回路は ロジック IC が出来る前からトランジスタとダイオードで作っていたポピュラーな回路で、図の様に2石で構成するとトランジスタの B-E 間の ON電圧やダイオードの ON電圧を約 0.7V としてみると、初段のベースには ONに必要な電圧は
0.7V(1stB-E)+0.7V( Diode )+0.7V(2nd B-E) = 2.1V となります。
抵抗 2kΩ で5Vにプルアップされていますから、いつもは ON 。すると2番目のトランジスタにベース電流が流れますので、トランジスタが ONして出力は 0V (正確にはトランジスタの Vce-sat で約 0.2V ぐらい)になります。このとき入力電圧はダイオードのON電圧含めて 2.1V - 0.7V = 1.4V 程度より上なら、この出力 ON( Low ) 状態になります。
よって、どちらかの入力がこの 1.4V 以下になるとトランジスタは OFF となり、出力トランジスタは OFF (オープン)なので、抵抗 2kΩ で 5Vにプルアップされているので、出力は High( 5V ) となります。
2) TTL
図の様に入力部分はさきほどの DTLであったダイオードの代わりにエミッターが2つある変なトランジスタになっています。ここがトランジスターになったので DTL -> TTL となったわけです。ダイオードとの組み合わせよりコンパクトで高速な動作が出来るエミッタ2個付きのトランジスタに変えたこと+負荷抵抗を 100Ωに小さくしたことで、動作速度も向上しました。入力のしきい値は中央のトランジスタのベースまでは
0.7V(1stB-E)+0.7V(2nd B-E) = 1.4V となります。
入力段のトランジスタで考えると、ベースが5Vにプルアップされているので、エミッターが 5V -0.7V = 4.3V 以下ならいつでも ONしてしまいそうですが、トランジスタが ONするということは、コレクタ電圧は エミッタ電圧 + Vce-sat(約 0.2V)なので上記 1.4Vよりも 0.2V 低い 1.2V 程度がしきい値となります。
この回路では出力段のトランジスタのコレクタ側にもトランジスタを追加して、出力 High 時に抵抗のプルアップだけだったものが、トランジスターによって電流を流せるようになり、出力のスピードアップにもつながっています。
この回路はいわゆる NAND ( Not And )回路であり、 AND回路が両方ともに入力が1(High)のときだけ出力が High になる回路ですが、その出力が反転したものです。また、TTL は回路的には負論理動作で、回路から見て判るように入力に +5Vを加えても電流は流れません。いつも入力は High レベル状態なのです。
これを変える条件は、「入力を 1.2V以下にする」ので、入力をGNDに落とすのが正しい使い方です。TTL は オープン時は High レベルで、アクティブにする時は GNDに落として使う( Low アクティブ)のが、正しい使い方です。ですので、入力ポートとして使う場合は LOW(GND)に落として使うスイッチなどに、出力ポートでは出力電流があまり多く必要の無い、主にGND側の引き込む使い方の比較的負荷の軽い信号に使われます。
もちろん低い内部抵抗・Low側フルスイングのオペアンプ( Low 時に 1.2V以下出力出来るもの)などで駆動することも出来ます。
市販のパルスジェネレータなどでも大丈夫です。
このように、TTL レベルと定義されると、なんとなく 5V で使う信号と大雑把に考えられますが、TTLの本来使われてきた経過から考えるとしきい値が 1.2V 〜1.5Vの信号で Low アクティブ と考えた方が正しい使い方ではないでしょうか? 今ではロジック ICも CMOSが多いですから、しきい値は 2.5V が標準です。電源電圧が 3.3Vではしきい値がその半分 1.7V 程度と色々ですが、信号伝送には LOW を積極的に使うほうが、その時信号ラインが低インピーダンスにキープできるなどのメリットがあるので、TTL の名称は続くのでしょうかね。