GNDのはなし
GNDのはなしとは
かつて民生デジタル衛星放送セットトップボックスを開発していた頃、初めて BS-PCMオーディオ回路を開発して結構な S/N を実現したのですが、環境的にはまだアナログの VTR などの信号もやり取りしなくてはならないため、RCA ピンジャックや欧州ではよく使われている SCART コネクタなど多ピンの信号を切り替える機能も要求されました。 そんなときに悩むのはグランドの処理です。どこでケースに接続するのか、外部から来る入力のグランドはどうするのかなど、結構悩みながら開発しました。
出力はわりとスマート
右図のように出力回路は、出力コネクタ付近でケースに接続するのが一般的です。電源回路の元でGNDに落とした方が良さそうですが、トランスやスイッチング電源等、結構フローティングで設計出来るので、外部からの静電気ノイズなどを考えると出力コネクタ付近でケースに接触、ネジ止めのほうが対策しやすいし、比較的大きなGNDパターンもとりやすいので、RCAジャック等リアパネルにGND落とすことが多いです。
他に基板としてGNDに落としたい場合はネジ止め付近に個別ランドを作り、0.1µF や 1000PFなどのコンデンサーで交流的にアースし、直流のループを避けることもあります。各社の VTR などを見てもほぼ同じような構成でした。
入力が問題
まず、VTR などの RCA ジャックは入力と出力がペアで配置することが多く、GND共通ならパターンが楽なんですが、そうはいきません。
右図中央を見て下さい。GND共通にすると、出力電流が入力のループに入るので、出力の影響が出てしまいます。同じ信号ならばあまり気にしませんが、BS-PCMの信号をVTRのREC端子に出している場合に、VTRの信号を入力に切り替えるとPCMの音声が混じったり歪んだりします。GNDラインから漏れてきてしまうのです。
そこで、通常は入力のGNDも信号ラインと一緒に入力アンプまで引き回してくるのです。ここは結構ノウハウがあって、ビデオ信号の GNDとオーディオ信号のGNDはやっぱり分離しないといけないし、途中にデジタル信号等に近寄ったり交差しないよう、両側を GNDでガードしたりします。
PCMデジタルのビットストリーム信号などはレベルが高いし、ノイズとして映像に回り込みやすかったり、結構大変でした。最初に開発したセットは PCMデコーダー部分をシールドケースで覆ったりして結構お金をかけました。
« チャタリングのはなし | トップページ | RFパワー段の温度補償 »
「アナログ」カテゴリの記事
- 故障の原因はやっぱりコンデンサー(2017.10.04)
- マイクアンプのはなし(2017.06.23)
- プロ用マイクアンプのはなし(2017.05.23)
- 久々の良本「電子部品大事典」(2017.04.11)
- SiC FETのゲートチャージのはなし(2016.09.23)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/556493/59428850
この記事へのトラックバック一覧です: GNDのはなし:
コメント