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2012年7月27日 (金)

トランジスターとフェルミ準位のはなし

トランジスターとフェルミ準位とは
 前回のフェルミ準位のはなし、PN接合のダイオードまででしたが、今回はトランジスターについて考えてみます。Ferumitr_2
ハード的には
例として、NPNのトランジスターを右図のようにフェルミ準位について見てみます。いちばん上が電圧を何もかけないとき、ちょうどダイオードのPN接合がエミッター・コレクター向きに2つある様子がわかります。ベースが真ん中で、P型半導体なので、フェルミ準位fLが同電位とすると、ベースの電子のあるレベルが高いため、壁となってエミッターの電子はコレクターに行けません。
中央の図は、コレクターにVccの正の電圧をかけた図です。コレクターが正の電圧がかかっているため、(電子レベルの)電圧レベルが下がって、ベースから電子が少量流れ込むかもしてませんが、エミッターからは依然としてベースのP型の壁があるため、コレクターに電子が流れることはありません。
 次にいちばんしたの図です。ベースに正の電圧をかけますと(ちょうどPN接合のダイオードに電流が流れ出す Vf と同じように)ベースの電位が下がり、エミッターから見た電子の流れを阻害していた壁がなくなります。それで、急激にエミッターから電子が移動して、コレクターに電流が流れることになります。
 ここで、注意して欲しいのは、ベースに流れる電流はこの電子の壁となったフェルミ準位の壁をなくす程度の電流があればよいので、エミッターからの電子のほんの少しでこの壁を操作できることです。
 このベースに流れる電流とコレクターに流れる電流の比率を「電流増幅率」hfe と呼んで、トランジスターの性能を示す1つのパラメーターとなっています。
ソフト的には
 ここで、トランジスターの動きで重要なのが、コントロールするベース・エミッタ間にかける電圧と電流です。ある程度の電流が必要ということは、電子の流れだけでなく、(電子の無い穴)正孔も同時に動いているという点です。この正孔がシリコンなどの半導体では移動速度が遅く、スイッチングでベース電圧を切っても、正孔がP型半導体層に残り、OFFするのに時間がかかることを引き起こします。
 電子と正孔の2つの電荷を運ぶもの(キャリア)で動作するこのようなトランジスターをバイポーラ[Bipolar transistor]といって、主に電子のみで電流を運ぶ N-CH MOS-FETや正孔で動作する P-CH MOS-FETのように単独のキャリア(運ぶもの)で動作するものをユニポーラ[Unipola transistor ]といいますが、一般的にはそう呼ばずに、単純に「FET」といってトランジスタの方を「バイポーラ」と呼ぶことが最近は増えてきました。


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