差動アンプのはなし
差動アンプとは
トランジスタ2石をエミッタ(FETの場合はソース)共通で使って、2つの入力電圧の差を増幅するような増幅器。通常初段に用いられる。オペアンプなどの入力回路で、+プラス入力と-マイナス入力のある増幅器がこの差動アンプにあたる。
ハード的には
右図が差動アンプの初段ですが、エミッタ共通で VE が共通電位となっています。ここで、仮に VE = 1V とすると、ベース電圧はそれぞれ Vbe の約0.7Vを加えて、VB1 =VB2= 1.7Vとなります。Re = 1kΩ とすると、エミッタ電流は両方で 1mA 、2石とも等しくすると片方0.5mAとなります。ここで、Rc = 10kΩ Vcc =10Vとして、VC = 10V -10kΩx0.5mA = 5V となります。ここで、VB2入力が僅かに電圧が上がって、1.8Vとなったとします。するとQ2のVbeが増えますので、コレクタ電流が増えます。結果、電流の増えた分だけ Rcによる電圧降下が増えて、VCが下がります。
この動きでは VB2は反転入力(-マイナス入力)といえるでしょう。
もう一方、今度は反対側の VB1の電圧だけが1.8Vに上がったらどうなるでしょう?Q1はコレクタにVccが直接繋がっていますので、エミッターフォロワーとして動作しますので、繋がっている共通エミッタの電位(VE)も上昇します。そうすると、VB2は 1.7Vで固定されていますから、Q2のVbeが減って、コレクタ電流が減るように動作します。よって Rcによる電圧降下が減り、VCは上昇します。この動作は VB1が正極性入力(+プラス入力)という動作をすることが判ります。
図はもっともシンプルなオペアンプの回路図です。エミッタ抵抗の代わりにトランジスターで定電流源を作っていますが、一定の電流を流すことによって、左右のトランジスタのバランスの変化が検出しやすいような働きをしています。
ソフト的には
なぜわざわざ、2つのトランジスタを使ってまで2つの入力をもったアンプが必要なのでしょうか?増幅だけならば、1つの入力のほうが簡単になると思います。
・1つは差動増幅でオペアンプのように出力からマイナス入力にフィードバックさせて、増幅度を設定できるようにすることです。しかしながら負帰還の回路は必ずしも差動増幅を必要としません。直結2石の簡単な回路でもゲインを設定できます。
・もう1つは、2つのトランジスタでVbeの温度特性によるバイアス変化を相殺出来るからです。OPアンプICなどは、ゲインを高くとると温度の変化によるズレが大きな影響になってしまうので、多段の集積回路では温度安定度は重要な点です。
差動増幅回路はオペアンプだけで無く、高周波の増幅器にも多く使われ、初期に使われたICは ICというよりは差動用トランジスタ +αぐらいの簡単なICが多かったですが、同じチップ上で作られているので、大変温度的にも安定して使えたものでした。昔のオーディオアンプの初段などはトランジスタを2個向かい合わせにして接着して差動回路の温度安定度をよくしたものでした。そういえば差動用2個入りトランジスタやFETもけっこう種類がありましたね。
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コメント
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: 職務経歴書のサンプル | 2012年7月13日 (金) 10時39分
差動アンプの特徴は、非直線デバイスであっても、差動化することでリニアリティーを大幅に改善できることではないでしょうか?
投稿: | 2018年12月12日 (水) 15時12分
リニアリティー改善は大振幅の場合と、小信号の場合とでは、効果が違うと思いますが 大振幅信号に関しては入力電圧に対するエミッタ電流の増減が半分になるので、その点では改善されるかと思います。
全体的なリニアリティ改善に対しては差動回路よりも帰還回路が大きく関係しているのではないでしょうか?
投稿: SUDOTECK | 2018年12月12日 (水) 17時15分