カレントループのはなし
カレントループとは
[ Current Loop ]で、機器との信号のやりとりを電圧の大小でなく、電流の大小で伝達する方法です。2〜40mA程度の電流を流して数km の低速な信号をやりとりするのに使います。アナログの電話も同じしくみで音声信号を伝送していました。
ハード的には
ではなぜ電流で信号を伝送するのでしょうか?右の図を見て下さい。CMOSで High/Low を伝送しようとすると、上の図のように信号線のインピーダンスを低くしてノイズを避けるために仮に 1kΩでプルアップしているとします。送信側のCMOSが Low を出力して OUTA が 0Vとなったとします。受信側のCMOSは閾値が 5Vの半分の 2.5Vとしたときに、伝送線の抵抗が何KΩまで大丈夫でしょうか? 1kΩでプルアップしていますから、 RX が 1kΩのときにちょうど半分になって 2.5Vになりますから、伝送電線の抵抗値 1kΩまで動作すると考えられます。
次に電流ではどうでしょう?送信側はオープンコレクタなのでON時の飽和電圧 0.2Vとしましょう。受信側は入力とベースに 100Ωベースエミッタに 820Ωなので、上の例と同じ RXが 1kΩのときはどうでしょう? ベース・エミッタ電圧が 0.7Vとして伝送線のRX と100Ωを足して 1.1kΩに電圧 5V -0.2V-0.7V = 4.1V 4.1V÷ 1.1kΩ =3.7mA と電流が流れますので、トランジスタの hfe(電流増幅率) を100としてもコレクタには200Ωの抵抗に十分電流を流せることが判ります。hfe 100として 200Ωに4V出力させるには、 4V÷0.2kΩ = 20mA で、ベースには 0.2mA以上必要とわかります。
ベース・エミッタ間の 820Ωを流れる電流は 0.7V÷0.82kΩ = 0.85mAなので、( 5V -0.2V-0.7V )÷(0.2mA+0.85mA) =3.9kΩ となって、上記 CMOS の4倍以上の長距離を伝送できるのがわかります。電圧伝送では距離によって受信端では電圧が下がってしまいますが、カレントループでは送信側と受信側で同じ電流値が流れるため、送信側でも受信側がつながっているかどうかを流れる電流を見ることで判りますので、回線の安定性の確認が出来るのもメリットではないでしょうか。
ソフト的には
現在はオープンコレクタでなく、フォトカプラーや MOSリレーなどを使って低速な信号を伝送するのは当たり前になっています。グランドが分離できることから、グランドラインとともにツイストペア線で配線され、ノイズに対しても信頼性の向上を図っています。
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