FETと三極管のはなし
FETと三極管とは
FETは普通のバイポーラトランジスタと違って、ゲートにマイナスをかけてバイアスし、ゲート電流がほとんど流れないことから、しばしば真空管と似ていると言われています。実際 三極管ではほとんど同じような動作をするので、昔の真空管を使った回路とFETを使った回路を比べると大変似ていることが分かります。
上はMK10 という 2SK19の古いバージョンのFETを2つ使ったカスケード増幅回路と6AQ8という双三極管(2つの三極管が入っている真空管)の同じような高周波増幅回路です。
二つを見比べて面白いのは、どちらも入力インピーダンスが高いので、同調回路のホット側から直接信号を取り出している点です。トランジスターになって一番苦労したのが、同調回路とのマッチングで、一番のホット側からとると全体としてコイルのQを下げるようになってしまい、シャープに同調しないのです。それでコイルの途中にタップをとってインピーダンスの低いポイントからトランジスタのベースに加えます。マッチングがよくなっても今度はトランジスタのベースに電流を流すためのバイアス回路が必要で、コンデンサーでコイルとの直流接続を切ってバイアスを加えたり、コイルのコールド側をコンデンサーで直流的に浮かして使ったりしました。FETが出て来て古い高周波技術者は使い勝手の良さに喜んだでしょう。
真空管では+電源電圧が120Vと高くなっています。それでグリッド(FETのゲートに当たる)のバイアスは 470Kという高い抵抗値を使っています。電流も 10mA流れるとすると 1kΩでは 10V で電力は 0.1Wとなりますので、カソードや電源デカップリングの抵抗は 1kΩ1/2Wをつかってます。そもそも真空管の時代はラグ版に半田付けする配線が普通でしたので、大きな抵抗が普通でした。しかしながらコンデンサーは耐圧が200V程度は必要なので、セラコンが出る前はマイカコンデンサーや大容量のものはオイルコンデンサー等を使いました。オイルコンデンサーは今の電解コンデンサーと同様劣化するので、昔はこれが原因でテレビやラジオがよく故障しました。古くなるとオイルが漏れだしていたりしてけっこう汚れているので、かえって不良がわかりやすかったかな?昔のラジオ屋さんは自分で修理してましたね。小さい頃の私の夢は自分でラジオの修理屋をすることだったんですが、今時修理する仕事って少ないですね。
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