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2012年3月 9日 (金)

Active Loop Filterのはなし2

Active Loop Filterとは
 PLLの位相比較器からの信号をVCOの可変周波数デバイスにコントロール電圧を送るためにフィルタリングするフィルターで、今回はアクティブ素子を使った回路を検討してみます。
ハード的には
20120309_145927
 右図はアクティブフィルターの回路例で、オペアンプの入出力に1KΩと0.015µFのLPF(ラグフィルター)が入った回路ですが、帰還のラインの R4に直列に 0.15µF が入っています。このコンデンサーで低域のLPF(積分回路)となっていますが、実は PLL回路に使われているこのようなフィルターは、ゲインの周波数特性だけでなく、位相の周波数特性が重要になっており、そのための重要なコンデンサーなのです。
1)普通のゲイン1倍の増幅器では..
 仮にC1をショートしてOPアンプ回路を増幅度1の反転アンプとしてみましょう。このときの特性が次のシュミレーション結果です。
20120309_145407
 ゲインは1倍で、赤色のグラフで示されていますが、2つのLPFによって高域がきれいに減衰してゆきます。位相のグラフは緑色の線で、100mHzで180˚の値が、200kHzあたりで 0˚になるのがわかります。
 ここで重要なのが、反転増幅器で 180˚位相がズレたループ系が、200kHあたりでは 0˚で正帰還のアンプになってしまうことです。このフィルターをPLLで使いますと、たとえば周波数設定が変わって位相比較器が大きく変化した時に正しいステップ応答をせずに、200kHzのリンギングが出てしまい、最悪200kHzで発振したりします。なんとか減衰量を取ろうとして2段LPFを入れたのが裏目に出て、発振する回路になってしまいます。
2)コンデンサーを入れて、低域の変化をつける。
 次が、回路図の通りのコンデンサーを入れた特性です。
20120309_145504
 ゲイン特性は青色のグラフのように低域で1000倍にもなり、ゲインが増えます。しかしながら、100kHzあたりの減衰量は変わらず、このあたりが基準周波数になるように設定すれば、クロックスプリアス除去性能は変わりません。
 ここで、重要なのが位相特性です。低域の位相が約90˚程度で、1kHz付近で +80˚、1MHz付近で -110˚とDC域からの位相差は反転しないので、発振しにくくなるのがわかります。
ソフト的には
フィルターの通過帯域を広げた方が応答速度を上げることができますので有利ですが、リファレンスクロック除去のために減衰特性を上げようと、段数を増やすと位相ズレから発振のトラブルに会いやすくなります。PLLの安定度や位相ノイズ除去特性を考えて設計するには、このようなアクティブフィルターの方がゲインや位相の余裕度で近年多く使われるようになっています。

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