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2012年1月

2012年1月30日 (月)

遅延バイアスのはなし

遅延バイアスとは
RFデバイスで特に GaAa(ガリヒ素)の高出力デバイスなどは、動作電流を調整するのにマイナスのゲートバイアスが必要です。しかしながらマイナスの電源の立ち上がりが遅かったり、素子が冷えていて電流を急に流すと電源をONした際に発振したりするトラブルが時々あります。そこで、電源立ち上げ時には先にマイナスのゲートバイアスを深くかけておいて電流が流れないようにしておきます。
ハード的には
Delayedps
マイナス電源のICは LM337を使います。オペアンプなどを使わないで単純に可変出来るマイナス電源を作りたい場合に有効なICです。このICはプラスの可変安定化電源 LM317と似ていて、出力と ADJ(下側の端子)の間の電圧を 1.25V にするように動作します。回路はオペンプでこの制御電圧を立ち上がり時に 0V にして、時間が経つにつれオペアンプ入力のコンデンサーがチャージされ、5Vの基準電圧で作られた電圧にしだいに近くなっていきます。
 ここで LM 337の動作を説明すると、電源立ち上げ時はこの制御電圧は 0Vなので、5.6kΩでGNDに繋がれた状態とおなじになります。基準電圧に繋がっている500Ωの半固定の中間では 250Ωでシリーズの 1.2kΩと合わせて 1.45kΩとなり、ここの電圧差が 1.25Vなので流れる電流は 0.86mAとなります。基準端子とGND間は 5.6kΩなので 0.86mA流れるとすると4.8V。よって合計 1.25V +4.8V = 6.05Vの電位差となり出力は -6.05V出力されます。
 次第にオペアンプ出力の制御電圧が+5Vに近づくと、同様の計算でGND電位が 5V上昇することになりますので、 -6.05V + 5V = -1.05V となります。よって電源立ち上げ時には -6.0Vという深いバイアスでドレイン電流を流れなくしておいて、時定数をもたせてしだいに -1.05Vにバイアスを変えて正常な電流値にすることができます。
ソフト的には
このオペアンプの部分を共通にして、LM337の部分を各デバイスごとに作れば多くのデバイスのバイアスをコントロールすることが出来ます。また、この回路を使うことによって LM337ではマイナス電圧を -1.25Vまでしか作れないところ、基準電圧に +5Vをかけてシフトさせることによって 0V近い電圧も供給出来るようになります。
 細かい点では電源OFF時の動作ですが、チャージ用のコンデンサーに並列に抵抗を入れて自然放電させるか、トランジスターをONさせてコンデンサーを 0V にして出力を深いバイアスにすることが出来ます。電源を切る時にドレイン電流を切ってから全体を OFFすることによって、電源OFF時の発振トラブルなどへの対策になります。

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2012年1月26日 (木)

1チップAMラジオ回路図追加

SCHEMATICSにワンチップAMラジオICの UTC7642 の回路図を内部回路も含めて記載しました。
UTC7642は TO-92 のパッケージに3端子のAMラジオの機能を詰め込んだICです。IC内部には10個のトランジスタが使われていますが、実際に増幅に関与しているのは6個でその他(黄色い背景の部分)はバイアス電圧を作るために使われています。3端子ではGNDと入力・出力で終わってしまい、電源端子が使えないので、このICは出力端子が電源端子を兼用しています。ここには 0.15µF という比較的大きなコンデンサーと電源からの1kΩを使ってAMラジオ周波数の500KHz〜 1600kHzはインピーダンスが低くして、かつ音声周波数に対しては高めなインピーダンスを持つようにしています。さらにこの出力端子から入力端子へ 100kΩの抵抗を経て 0.01µFでデカップリングして入力に直流帰還されます。これが AGC電圧となって強入力に対して飽和して歪むのを防いでいます。出力は1石で増幅してもう1石でエミッタフォロアで電流増幅してスピーカーを鳴らします。この回路が 1.5Vで動作するのですが、そんな低電圧で動作出来るのもトランジスタを使ったバイアス回路のなせる技でしょうか?
 秋月電子でこのICを買って来たので、また機会を見て作ってみたいと思います。Am_radio

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2012年1月23日 (月)

日本もまだまだ捨てたものではない...はなし

「日本もまだまだ捨てたものではない」とは
 先日は40年前に卒業した高校のクラス同窓会でした。私のクラスは理数科第1期生ということで、卒業後も結束が強く、ここ10年は新春の東京同窓会、夏の地元同窓会と年2回をこなし、専用のメーリングリストをもって同窓会を運営しています。43人中半分近くが常に参加し、担任の先生も毎回足を運んでくれるちょっと信じられない同窓会なのです。
 この年になると定年を控え皆いっぱしの管理職になっていますが、社長・校長になったり、自由業を謳歌している人もいれば、現役バリバリで頑張っている人もいます。そして彼らのひと言ひと言が実に「人生の経験」として参考になるのですね。前回夏は「原発」に務めている者から内情の解説があったりして、今回は「どうなる日本」が話題でしたが、アメリカ・ヨーロッパがダメになった後は「アジア」が出番だが、はたして中国だろうか?インドだろうか?と言うのです。
 やはり本命は「日本」と言いたい。そのわけは1億近くの人が読み書きでき、教育を受けて勤勉に働く国民だと言うこと。とかく労働力が安いからと外国に工場が進出するけど、人々の進歩の原点は理性・知性によるエネルギーであると思いたい。 ....とのことでした。
 同窓会に行く前、秋葉原の秋月電子に買い物に寄ったら、明らかに企業エンジニアの部品集めの人もいたけど、彼女を連れて(彼女が買いたかったのならそれはすばらしい)若い人が、こんなにも大勢電子部品を買っている風景を見て、「日本のエンジニアもすてたもんじぁないなぁー」と思ったのでした。
 東京スカイツリーは曇天でてっぺんまでよく見えなかったけど、とにかく大きかった、でも寒かった!
Img_0499


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2012年1月20日 (金)

ノイズ除去のはなし

ノイズ除去とは
 一般的にマイコンでスイッチを読み取る場合、スイッチにはチャタリングといって切り替え時に接点が短い周期で ON/OFFする物理現象から、接点電圧が短時間にON/OFFする現象があります。これを正確に読み取りたい場合は、抵抗やコンデンサーで時定数を作って、波形をなまらせて対処したり、ソフトウェアで何回か読んで平均化するなどの手法をとります。
Pulsecount
ハード的には
 右図は私がかつて、衛星放送のアンテナアクチェーターの制御時に使ったリードスイッチ型の回転センサとそこから数10m延長した受信部でのパルス信号受信の回路です。
 リードスイッチはモーターの回転に伴って動く磁石で ON/OFFしますが、このスイッチが切り替え時に短い周期でON/OFFするチャタリング動作をします。受信側で時定数を作ってフィルタリングしますが、何かの拍子で結構幅の広いノイズパルスが出る場合も多く、またモーターを動かすための大電流を流すリード線も一緒になっているので、切り替え時はもちろん、モーターの負荷がかかった時にもモーターからのノイズが紛れ込みます。このパルスを使ってアクチュエーターの動いた長さを測定してパラボラアンテナを信号の受信出来る位置まで動かすので、数パルス違っただけでも感度の最良点を外してしまうほどシビアな信号です。アンテナを端まで動かして戻ってくると数回に1回合わなくなる。古い電流を流さないと動かないアクチュエーターに変わるとズレやすいなど、もうすこしで完成するところで、完璧にならずに悩んでいました。
ソフトを見直す
 どうしてもHigh期間中のノイズが取れないので、ソフトで何とかならないか考えました。この回路構成上ではスイッチが ON している時は配線がGND に繋がっているので比較的インピーダンスが低く、ノイズが乗りにくいことがわかります。それで3回続けて Lowだったら Lowと判定することにしました。では High はどうでしょう?普通だったらHighも3回連続でとなりますが、ノイズが多く、HighなのにLowパルスが混じる場合が出てきました。これは抵抗でプルアップしているだけなので、数百Ω程度ではノイズが乗りやすくなるのでした。では Highが3回中2回以上でいいかなと変えたのですが、Low期間になる時にけっこうタイミング的に3回中2回Highのノイズが出てミスカウントは続いてしまいました。
 そこで発想を変えたのです。3回連続 Low 以外は Highと検知して Low期間の後の Lowは続行中、Low期間後Lowが3回連続しなかったら High 期間だとしたのです。3回中2回Lowがあっても High期間とするのです。これはパルス周期がある程度あるので、パルスの幅を正確につかむよりもHigh/Lowが変わったことを検出することが回転数の検出ミスをなくすために重要だったのです。
 ちょっとした発想のきっかけと、ハードの性質を見極めた変更の後は素晴らしい追従性を誇って製品として結構業界でも一目置かれた製品になりました。

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2012年1月18日 (水)

低雑音電源回路追加

SCHEMATICS に100KHzから50KHzまで 10nV/√Hz という低雑音の電源回路を追加しました。
 簡単なリップルフィルターでは平滑用のコンデンサーに限界があるため、低域がどうしても雑音が多くなってしまう点、電源電圧が負荷によって変動してしまう点が弱点でしたが、高速OPアンプをうまく使うことで低雑音化を図っています。
 低雑音にはノウハウがありますが、まず感度の高い部分の抵抗値を下げることです。この回路では電圧設定用の 470Ωと 22Ωの部分ですが、分圧比によって基準電圧を作っている低雑音の基準電源IC LM4040の 4.1V との比で電圧を決めます。この抵抗値は最高でも 1KΩ程度に停めることが熱雑音に対して有効です。この基準電源ICの出力は4.7kΩと10uFで十分雑音を除去しています。この誤差を増幅するOPアンプは出力にツェナーダイオードを使って電圧をシフトして電源電圧の半分程度で動作するよう工夫しています。出力段のトランジスタをドライブする電流も FETの定電流回路を使用して動作インピーダンスを下げてノイズ発生を抑えています。出力段のコンデンサーはセラミックコンデンサーを使うと 高周波域のESR が低すぎて発振する恐れがありますので、タンタルコンデンサーかアルミ電解コンデンサーを使います。
 これらの回路構成を使ったICとして電源とノイズのはなしで書いたADP150などが近い性能を持っていますが、汎用的な電圧を作りたい・電流を確保したいなどという場合は有効な回路です。
Lownoiseavr2

--------------------------------- 参考図書 ----------------------------------------
P109にこの回路が説明されています。
アナログ回路設計の勘所(トランジスタ技術SPECIAL)


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2012年1月16日 (月)

SWRのはなし

SWRとは
[Standing Wave Ratio]定在波比のことです。
主に高周波の伝達する上で、負荷に効率よくエネルギーを伝送させるためにマッチングがとれているかを計る値です。Swr
ハード的には
 右図で負荷 Zoでうまくマッチングがとれており、エネルギーがすべて負荷に伝達されている場合が、いちばん上の図です。しかしながら負荷と伝送路とのインピーダンスが合わないと負荷に届いた信号はある程度反射してしまいます。この進行波のレベル Vf と反射波のレベル Vr から SWR を求めます。
 定在波とはこれら進行波と戻って来た反射波が合成されて、ある場所では Vf + Vr の大きさになり、ある場所では Vf - Vr の大きさになって現れる定在波の大きい高さと、低い高さの比を定在波比として計算します。
 よって SWR = ( Vf + Vr )/( Vf -Vr ) となり、反射がない理想的な状態が SWR = ( 1+ 0)/(1 + 0) で
SWR = 1.0 となります。進行波1に対し、反射波が 0.1ならば SWR = ( 1+0.1 )/(1-0.1)=1.1/0.9 =1.22 となります。
 注意してほしいのはここで計算しているのは、波の高さなので、電気では電圧を計算していることです。とかくパワーアンプ等では出力を電力で表していますので、SWRを計算するには電力を電圧に変換しなければなりません。 P=VxV/Z なので、電圧 V = √(P x Z) となります。これを上記の SWR の計算式にあてはめると、 SWR =( √(Pf x Z) +√(Pr x Z) )/(√(Pf x Z) -√(Pr x Z) ) Zが分母分子にあるので省略して、
SWR =(√Pf+√Pr)/(√Pf-√Pr) となり、パワーの平方根で計算します。
 例えば、10Wの出力で反射が 1W ならば、 SWR = (√10+√1)/(√10-√1)=(3.16+1)/(3.16-1)=1.9 となります。
また、SWRに関連してリターンロスという言葉が聞かれますが、これは反射してロスになる電力を dBで示した物で、何も反射しなければ -無限大dB で、すべて反射する場合リターンロスは 0dBとなります。リターンロス -20dB ならば電力で 0.01倍 なので SWR = ( 1+√0.01)/(1-√0.01)=( 1+0.1)/(1-0.1)=1.22 となります。
ソフト的には
 現在 アナログのSWRメーターをシュミレートした iOSアプリを開発中です。リターンロスから SWR値を計算するだけでなく、その場合の負荷のインピーダンスを計算したり、進行波・反射波の2つの値からSWRを計る計器のシュミレートモードも用意する予定です。

20120116_132827


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2012年1月11日 (水)

分配器のはなし

分配器とは
 高周波の信号を2つ以上に分けたい時に使います。小電力ならばインピーダンスの低いメインのラインから小さなコンデンサーでカップリングすれば、インピーダンスマッチングに影響なく使えますが、すこし大きめの電力を分配したり、マッチングや出力した双方の影響を受けにくくするには、マッチングした分配器を使うと便利です。F_divider
ハード的には
最も簡単なのは 50Ωラインでしたら 16.6Ω(実際は18Ωぐらい)の抵抗を3本使った抵抗分配器です。周波数特性は広帯域に使えますので便利ですが、抵抗なので損失が出てしまいます。理論的に2分配では電力が半分になるので3dBの損失なのですが、この回路では抵抗のロスで6dBの損失になります。
次にロスを防ぎたい場合はトランスで1:2にして出力側を2分割する方法ですが、トランスでは広帯域(特に低域)の特性が悪くなりやすいですが、スポット周波数でトランスで同調をとる方法を使った場合にはロスの少ない分配が実現出来ます。
市販の分配器にも使われているハイブリッド回路ですが、一度入力側のトランスで50Ωから25Ωに落とした後2個目のトランスで100Ωにしてその中間を25Ω側に接続します。出力側には100Ωの抵抗をつけ、出力の状態がアンバランス時に、この抵抗でバランスを取るよう働きます。
周波数特性を伸ばすにはコイルの巻き数を減らして線間容量をすくなくしたり、高周波特性の良いのフェライトコアを使います。この回路は出力側は20dB程度アイソレーションが取れますので、分配だけでなく合成回路にも用いられます。
いちばん下のウィルキンソン回路はプリントパターンを使って構成する物で主に数GHz以上に用いられますが、1/4λのストリップラインとバランス抵抗で構成します。ストリップラインの段数を多く取って帯域を広げたり、出力分岐数を増やしたりして用いられます。
ソフト的には
 90°ハイブリッドバランも分岐器の一つですが、比較的小さなパワーのアンプをパラレル駆動するために信号を分岐したり、ローカル出力を分岐したりする用途には、市販の製品も比較的高性能のものが安く作られているので、分配器を使うのが便利です。

---------------------------- 参考図書 ----------------------------------
高周波回路設計ノウハウ
トロイダル・コア活用百科

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2012年1月 9日 (月)

電子工学へのきっかけ

電子工学へのきっかけとは
 私がどうして電子工学に興味を持ったのかという原点を思い出してみました。
小学生のころはやはり、プラモデルやモーターで動く車なんかを作っていて、当時はスロットレーシングカーなどといって、溝のあるコースにレールみたいな電極があって、車がブラシでそこを接触しながら外部からの電源コントロールで走るやつでした。自宅で電池で動かしているとすぐ電池がなくなるので「いまいちだなー」とおもっていたところ、当時の「子供の科学」などという本の宣伝にあった「太陽電池付きキット」に目がいったのが始めのきっかけですね。Mk000a2
 それは「マイキット」という名前の電子回路を実験するセットだったのですが、どうもこの「太陽電池」だけに目がいってしまっていて、親にせがんで(めったに買い物をせがんだりする子供ではなかったので、結構高いものだったらしいが..)買ってもらい、さっそく太陽電池でモーターを動かしてみると全然動かない。電圧は 0.5V で数mAしか流せないので当たり前ですが、しかしながら説明書を見るとなんと「ラジオ」が作れるらしいので、ちょっとやってみることに.....。
 部品はボードにすべて付いていて、それぞれの端子にはバネみたいな物に接続されているので、使う人は両端が剥かれたリード線で接続するだけでいいので、子供でも簡単でした。
 田舎なのでアンテナがないと音が非常に小さい。確かAC100Vの電灯線をアンテナとして使うように高耐圧のマイカコンデンサーがついており、ドキドキしながら電源コンセントに線を繋いだ覚えがあります。
ハード的には
 どのような物が作れたかはあんまり覚えていないが、取説を紹介しているサイトがあったので、見てみると、この初期型よりちょっと後のやつだったような気がする。スピーカーもついていて、親父が誤ってふんづけて壊したのを泣きながら怒った覚えがある。次の日親父はもっと大きいスピーカーを買って来たのですが、今思うと、どこから買った来たのだろうか?当時はキットやパーツ店など無かったので、懇意にしているラジオ屋を廻ったのだろうと思う。
 そういえば親父は自分で写真を焼くほど趣味に没頭するタイプで、それが講じてか私には顕微鏡とか、ビーカーとか、メスシリンダーとか科学的なものは頼むとよく買って来てくれた。
ソフト的には
 電子回路というのは不思議な物で、ちゃんと繋がないと動作しない。繋がって動作していても、そこに電流が流れているか、電波が来ているか見えない。見えない物なんだけど、確かに存在する。そんな不思議な物につきあって、エンジニアになってしまったのですが、今思うとあの「太陽電池」がなかったら...もしも当時の太陽電池がパワフルでモーターが動いてしまったら...電子回路エンジニアにはなっていなかったかもしれないなぁ。

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2012年1月 7日 (土)

NFのはなし

NFとは
[Noise Figure]で雑音指数と呼ばれ、雑音の少ない(多い)評価に使われます。
ここではアンプのNFと雑音の関係を考えてみます。
Nf
 右図のRFアンプの入出力で考えてみます。RF INに入力信号が入りますが、この入力で信号が Si として雑音が Niとします。出力は信号が So 雑音が No とします。いわゆる信号対雑音比(S/N)は、入力で Si/Ni 出力で So/No です。それぞれのLogをとって対数にして表現したものですが、入力が 信号 1mW 雑音 0.1µWならば S/N比 Si/Ni = 1mW/0.1µW= 1000µW/0.1µW = 10000 dBで表すと 40dBとなります。 ゲインが100倍とすると出力は 1mW x 100 = 100mW 、ノイズは 0.1µW x 100 = 10µW となるところアンプのノイズが加わって 2倍の 20µWとなったとすると S/N比は 100mW/20µW = 100000µW/20µW = 5000 で、37dB となります。 NFは 40dB - 37dB = 3dB となります。
要はこのアンプで雑音が2倍( 3dB)悪くなるというのがわかります。
 もう一つの下側の例では、入力にバンドパスフィルターが入っています。この場合BPFを入れることによって 信号が3dB減衰するとします。雑音も同様に 3dB減衰する状況ならば S/N比は変わらないはずです。しかしながら、受信機の入力段等入力の熱雑音が影響するほど低いレベルの信号を増幅する場合はどうでしょう?
空間には熱雑音がある
 熱雑音のはなし
にも書いたように、分子が振動して温度を持っている環境には熱雑音があり、25℃では
-174dBm/Hzというレベルで測定されます。仮に帯域幅 100kHzですと、-174dBm + 10Log(100,000)= -124dBm となります。0dBm = 107dBµ で換算して -124dBm = -17dBµ 程度なので、受信機の入力にはけっこうありえるレベルです。仮に入力信号が 0dBµ とすると入力 S/Nは 17dB あることになります。これに3dB減衰する BPFをつけた場合どうなるでしょう?信号は 3dB減衰しますが、熱雑音はAでもBのBPF出口でも同じ -17dBµあります。(どこでもこの熱雑音レベルがあるということです)すると、信号が 3dB減るので -3dBµ -(-17dBµ) = 14dB と S/Nは 3dB悪くなってしまいます。NF=0.8dBなんていくらNFの良いアンプを使っても、前段で減衰してしまうと 3dB+0.8dB = 3.8dB とこれだけで普通のNFのアンプになってしまいます。ヘリカルフィルター等いれれば妨害波に対する切れは良くなりますが、ロスが多いとせっかくの感度が台無しになってしまいますね。
ソフト的には
 仮に信号レベルがそんなに低くないから関係ない...と思うかも知れません。しかしながら広帯域のアンプを考えてください。現在では 100MHzから2GHzなんて広帯域のアンプがあります。この場合は帯域は約 2GHzとすると -174dBm + 10Log(2,000,000,000) = -80dBm となります。もしゲイン 60dBのアンプならば、入力が無くても出力には -20dBmのノイズが出力されることになります。
NFは最前段のNFが主となりますがその、詳しい話はMWAVE-LABORATORYさんの雑音指数 (Noise Figure , NF )その2などがよくわかるかと思います。

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2012年1月 5日 (木)

高耐圧セラミックコンデンサーのはなし

高耐圧セラミックコンデンサーとは
 高周波で使えて、高出力のデバイスの出力カップリングやマッチング調整、電源やバイアスのデカップリング等高周波で特性の良い積層セラミックコンデンサーが使われますが、高い電圧や電力レベルの高い場所ではコンデンサーの損失による発熱や、高周波電圧に帯する耐圧が必要になってきます。
ハード的には
 Hv_cap
 右の図は TDK の積層セラミックコンデンサー C シリーズの静電容量に帯する耐圧と左図の表です。温度特性の良い CH 特性は250Vまでなら100PF程度まで 1608で使えますが、630Vのものは 0.01µFで4532サイズになります。
他には XR5/XR7であれば 1µFまで450V耐圧がありますので、精密なマッチングの場所でなければ使えそうです。
 表の ATC は American Technical Ceramic Corp. のコンデンサーで、手半田で実装出来る電極の強度が高いセラミックコンデンサー 100A/100Bなどが有名です。容量的には 100A で 100PF以下、 100Bで1000pF以下がよく使われますが、高い周波数でマッチングをとるための調整用コンデンサーとしてや、終段の高電圧部分のデカップリング等使われています。サイズとともに様々な電極がラインナップされ、数個をまとめて電極につけたものも販売されています。
ソフト的には
 コンデンサーの周波数特性のはなしにあるように、コンデンサーは容量によって周波数特性が異なり、低い周波数でインピーダンスを低くするには大容量のコンデンサーが必要です。しかしながら高誘電率で耐圧が低いコンデンサーでは電圧をかけた時に容量が減ってしまいますので、その点注意が必要です。

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2012年1月 3日 (火)

D Clock アップデート中

iOSデザインクロックアプリの D Clock を元旦からアップデート作業をしています。Setalarm
 今回はアラーム機能の追加ですが、アラーム設定がただ時刻設定ホイールでやるんじゃつまらないと思い、指で文字盤上の長針と短針をなぞる感じで時刻を設定します。
 もちろんアラーム音で知らせますが、これをするためには常にアクティブにしないとなりません。起床アラームにするにはスリープしないよう電源が必要です。
 しかしながら今回、「ローカル通知」の機能を使って、バックグラウンドでも OSに通知してもらうことで、スリープ中でも通知されるようにしました。
Locknitif
パワーアップした D Clock に乞うご期待!


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2012年1月 1日 (日)

2012新年

2011


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