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2011年8月 3日 (水)

カップリングとデカップリングのはなし

カップリングとデカップリングとは
 [ Coupling ,De-Coupling ]で、主にコンデンサーを使う用途で分けているのだが、昔はカップリングというと、高周波アンプの段間の結合コイル(いわゆるM結と呼ばれていた)を近づけたり,離したりして「カップリングを取る」とか、ローカル発振出力をミキサ段のグリッド(真空管)に近づけて最適な注入量を設定したりて「カップリングを調整する」ことだったけれど、要は「カップル」は結びつけることで、結合させることです。
Coup_decoup
 反して「デカップリング」は、カップリングさせないという用途で、右図のようにアンプの後段から電源回路などを通って信号が前段に漏れないように、抵抗と(時にはインダクターやEMCフィルタ)コンデンサーで分離してGNDに落とす役目をするのが、デカップリングコンデンサーです。
ハード的には
 カップリングにつかうコンデンサーは、希望周波数帯域で十分インピーダンスが低い必要があります。十分低いからといって、むやみに大きくすると今度はコンデンサーの外装とGNDとの浮遊容量によってGND間にコンデンサーが入ったと同じ働きになり、高い周波数で伝達量が減ってしまいます。また、コンデンサーには自己共振周波数がありますので、その周波数付近でピークが出て思わぬ周波数特性になってしまうこともあります。周波数特性については「コンデンサーの周波数特性のはなし」を参照ください。
 デカップリングはカップリングの逆で、いかに落としたい周波数でインピーダンスの低いコンデンサーを選択するかです。片方がGNDで、浮遊容量が増えても電源ならかまわないので、10倍づつぐらい違った容量のコンデンサーを数個使って、インピーダンスを下げることをよくやります。デジタル回路では 0.1uF が定番ですが、これに 1uFや 4.7uFぐらいの電解コンデンサーをつけたり、高速ロジックでは 1000PFぐらいをつけたりして、電流を消費するデバイスのすぐ近くにつけて、他への影響を無くしたり、パルス的な電流消費をコンデンサーが補給したりして、安定化します。高周波アンプでは 100PF + 1000PF + 0.01uF なんかが定番です。
ソフト的には
 従来はEMI輻射などデカップリングコンデンサーの強化や、出力端子へのフィルタリングなどで対策していましたが、デジタル機器などは元の信号ラインのライン長が長いとどうしてもそこから内部全体に輻射してしまう傾向がありました。バスラインに使えるEMIフィルターなどが多く出まわっているので、「不必要な高速伝送はしない」という考えで、フィルターを入れたり、インダクタンス成分を積極的に考慮して「バスラインの遅延量を合わせる」など、設計手法も進化していると思います。
 しかしながら、大電流・高速スイッチングが要求される今日、安定した動作にはきちんとしたデカップリング設計が求められるようです。CPUの裏に0.1uFのセラミックコンデンサーがたくさん付く時代から、大きな1uFのコンデンサーで済むような製品も出ているようですね。

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