ダイオードを使う
ダイオードを使うとは
新シリーズ第1弾。デバイスをや部品を使う場合のあれこれについて考えてみます。
今回はダイオード。
ハード的には
ダイオードはよく説明される「P型半導体とN型半導体が接合されて、片方向に電流が流れる」といった点は基本ですが、そもそもの分類は半導体の種類で分けると。
1)ゲルマニウム(Ge)ダイオード
IN-60などが代表的。古くから開発され、ゲルマニウムの半導体に金属を点接触させて作っていました。ガラスのケースの中をよく見ると四角いゲルマチップがカソード側にあり、アノード側から少し曲げてスプリング効果をつけた金属が接触している様子がわかります。順電圧が約 0.3Vと低く、ラジオの電波を整流するのに小さいレベルでも検波出来たので便利でした。しかしながらスイッチング速度や流せる電流は多くなく、やがて廃止されました。
2)シリコン(Si)ダイオード
小信号スイッチングでは1S1588などが代表的。トランジスターがシリコンに移行するに従い、回路中の温度補償バイアスなどに使うダイオードもシリコンに変わってきました。またデジタル信号を扱うスイッチング分野での使用も増えて、現在高周波スイッチングや大電流の分野でも使われます。
3)ガリヒ素(GaAs)など高周波用ダイオード
高速スイッチングや高周波アッテネーター、高周波の逓倍などの用途に向け、電子の移動度にすぐれる素材で開発されています。
実際使うには
何を基準にして選択すれば良いでしょうか?以下考えてみます。
A)用途で考える(周波数で考える)
ひと言に交流を検波したいと思っても、どのくらいの周波数かでデバイス選択が変わります。交流電源 50/60HzだったらたいていのダイオードでOK ですが、1GHzぐらいのマイクロ波を検波して直流にする場合は、高速なショットキーバリアダイオードや GaAs製のダイオードが必要です。
B)電流で考える
AC 100Vからトランスで5V 10mA程度の電源が必要な場合は、1Aクラスの整流ダイオードでも良いですが、安価なスイッチングダイオードで大丈夫ですね。高価なショットキーダイオードを使う必要もありません。では1GHz400W 程度の高周波を入り切りしたい場合はどうしましょう?高周波のPINダイオードを使うしかありませんが、最近は大電流のものも出来ています。
C)電圧で考える
電流はOKだけどもうひとつ考える必要のある点は電圧です。図のようにダイオードは逆方向の電圧に対しある電圧で電流が流れ出す限界があります。これをうまく利用したのがツェナーダイオードですが、通常のダイオードでは耐圧を超えると破壊されてしまいます。
電流が 10mA程度だからといってAC100Vに小型ダイオードを使うと壊れるのは明白です。きちんと耐電圧を考えて選択しましょう。
D)その他
その他ダイオードは、スイッチングだけでなく逆電圧をかけたときの静電容量の変化を利用したバリキャップダイオードや、高周波アッテネーターやスイッチに使う PIN ダイオードなどダイオードの整流動作とは違う目的で使われるものがあります。
用途がちょっと違いますが、発光ダイオード(LED)もダイオードですね。
回路的な使い方はまた別の項目で書きます。
ソフト的には
ダイオードを使う場合注意しなければならない点がもう1つあります。それは順方向電圧の温度による変化です。温度が下がるにつれて順方向電圧が上がりますので、電源からシリーズに抵抗などで電流を設定していた場合、低温で電位差が少なくなり電流が少なくなって ON抵抗が増えたりします。逆に高温で電流が流れすぎて発熱が増える場合があります。この温度による電圧変化を利用してトランジスタのベース電流を制御して温度に対し安定化させるような使用法もあります。
参考図書1-----------------------------------------------------------------------------------------
第1部 ダイオードの基礎と応用など 詳しい説明がでています。コラムでどうして可変容量ダイオードが 1SVxxx なのか、整流ダイオードが 1SRxxx なのかなんて話も面白いですね。
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