Offset のはなし
Offset とは
電圧などをシフトさせて信号の中点電位を動かす場合などに使う。AC波形にDC成分が重畳されているような場合、DC成分の電圧をXとすると「X ボルトオフセットされた AC電圧」と呼ばれる。
ハード的には
高周波検波ICでダイナミックレンジの高いものなどは、信号がない場合でも数100mV程度の直流出力があるものがあります。(残留電圧、ゼロ電圧)これらをメーターなどに出力する場合、そのまま増幅するとその分だけ振れてしまうので、それを打ち消すためにオペアンプ回路にオフセット調整回路を使います。
図はAC波形に直流でVofs だけ+にオフセットがかかった場合ですが、ボリュームを0Vにしたそのままの状態では直流成分も含めて増幅しますので、出力にも同じ割合で直流成分が乗ってしまいます。[図のオレンジのライン](この回路は反転増幅回路で、正確には負の出力が出ますが、説明を簡単にするためプラス側にグラフを書いています) そこでボリュームでVofs と同じ電圧オペアンプの+側に加えますと、[図の青色のラインのように]Vofsの電圧が出力=0 Vにオフセットされます。それで、出力には 0Vを中心にオフセットのない信号が現れます。
実際に正負関係が同じになるようにするには、OPアンプ反転回路を2段使って行います。オフセット調整は初段だけで良いですが、注意しなければならない点は初段の出力電圧はマイナスなので、オペアンプは正負の電源電圧が必要になります。まだ初段のゲインを大きくとりますと電圧が飽和してしまうことがありますので、きちんと計算して増福度を決めましょう。
ソフト的には
負の電源が用意できない場合、オペアンプをレールツーレール入出力の物を使用します。オフセット値がプラスならば、通常非反転回路の2つの抵抗のうちマイナス入力とGNDに抵抗を付けますが、そのGNDの所にオフセット電圧Vofsを加えます。ここは増幅度が左右される場所なので通常のボリュームだけで電圧を加えるとそのボリュームで増幅度が変わってしまいます。一度オフセット電圧を作るボリューム出力を増幅度1のバッファ回路のオペアンプに入れ、その出力をGNDのかわりに繋げると安定に動作します。
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コメント
お世話になります。
現在アナデバのDACであるAD9707の増幅としてLT1468-2を使って非反転増幅しています。
LT1468-2はオフセット調整のnull端子がついていてデータシートのP8に回路があります。
作った基板もP8の通りに作り、抵抗は100kでV-に-15Vを使っています。
しかし、DACの出力を0にしてオフセット調整のボリュームを目一杯動かしても可変範囲が0.26Vから0.25Vしか変わらず、0Vになりませんでした。
この端子は入力0Vでボリュームを調整すればV-まで可変できるというものではないのでしょうか?
投稿: yokada | 2012年10月24日 (水) 22時28分
LT1468-2をチェックしましたが、調整の可変範囲は記載されていませんね。通常はオペアンプのバラツキを補正する程度ですから、フルに可変出来る訳ではないでしょう。
1)オペアンプのゲインはどのくらいで使用していますか。入力側で調整するので、ゲインが少ないと可変範囲が狭くなって 0Vまでいかないかもしれません。
2)DAC = 0 にときにオペアンプへの入力は何Vですか? 0.2Vぐらいあるようでしたら、DAC側で調整出来ませんか?
3) AD9707との配線は P40 のシングルエンドですか?
投稿: SUDOTECK | 2012年10月25日 (木) 09時53分
回答ありがとうございます。
〉1)オペアンプのゲインはどのくらいで使用していますか。
2つ回路があり、5倍と12倍です。
〉2)DAC = 0 にときにオペアンプへの入力は何Vですか?
調査してみます。DAC側でオール0にしているので目一杯です。
〉3) AD9707との配線は P40 のシングルエンドですか?
シングルエンドです。
調整範囲の限界とすると外部に調整回路を設けなくてはならないですね。
投稿: yokada | 2012年10月25日 (木) 12時46分
シングルエンドで、P40の回路ですと、元々出力にある程度DC電圧が出てくるのではないでしょうか?+に入力されている リファレンスの電圧を合わせないと、DACが0出力時 Ref と同じ電圧になったとしても、-入力にはGNDにRbがあって電圧がドロップするので、ここのOP-AMP出力電圧は0Vになりませんね。電圧差を増幅するならば、+側もRs と Rbが必要です。この次に反転増幅OP-AMPがあれば、その +入力に電圧を加えれば、オッフセット調整出来ます。
投稿: SUDOTECK | 2012年10月25日 (木) 15時15分
すみません。
P40の回路とは少し違っており、IOUTAから終端抵抗を介して電圧に変換した信号を+入力に入れています。IOUTBはIOUTAと同じ様に終端抵抗を介した後グランドに接続しています。
-側は同じです。
なのでIOUTAに電流が流れない限り+側に電圧は生じないと考えているのですが、本当に生じていないか確認してみます。
投稿: yokada | 2012年10月25日 (木) 17時22分
お世話になります。
下記ページの入力インピーダンスのところに書かれている回路とほぼ同じ回路を組んでいます。
http://www.nahitech.com/nahitafu/mame/mame3/hihanten.html
異なる点は+入力とグランド間の抵抗の間にRCのローパスフィルタを入れていることです。
(DACの出力の階段状になるのを滑らかにするため)
+入力とグランド間の抵抗とR1の抵抗値は同じにしないとオフセットが出ると聞きましたが合わせる必要があるのでしょうか?
現在はグランド間の抵抗値が500ΩでR1が1kΩになっています。
RCフィルタを入れた場合、
+側の入力インピーダンスはどのように考えれば良いのでしょうか?
RCフィルタのRは信号に直列に入っており、+入力はハイインピーダンスなので、直列に入れても結局ハイインピーダンスと同じで、グランド間の抵抗が入力インピーダンスとなるのでしょうか?
投稿: yokada | 2012年10月26日 (金) 00時21分
R1が GNDに落ちていますので、この回路は基本的に+入力を(R1+R2)/R1 にする増幅器です。この場合+入力を増幅するだけなので、+入力には GNDへの抵抗は不要です。OP-AMPの +入力、-入力のインピーダンスを合わせるために R1とR2の並列した値を +入力にシリーズ(信号源インピーダンスが高い場合はGND間へ)入れることもあります。
+入力のDCインピーダンスは高いですが、周波数によります。ICの入力容量 4PFは 10MHzでは4KΩ程度になります。
*DAC=0の時の電圧はいかがだったでしょう?
投稿: SUDOTECK | 2012年10月26日 (金) 10時40分