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2011年1月 5日 (水)

バランのはなし

バランとは
インピーダンスを変換したり、位相の180°違う信号を作ったりするトランスですが、高周波ではセミリジッドケーブルなどで比較的簡単に構成します。Nさんからメールで質問もありましたので、ついでに書いてみます。
ハード的には
Bulun 右図のようにだいたい1/4λの長さ(セミリジッドケーブルの短縮率がありますので、60%から70%の長さですが)のケーブルを曲げて、50Ω側から半分の25Ωにする構成を示しています。1本で構成する場合がほとんどですが、厳密にはバランスを合わせるため、もう1本25Ω側の芯線・外皮を逆に繋げたケーブルを対照的に配置し、反対側をGNDに接続します。プッシュプルの出力側など効率を追究したりする場合有効に働くようですが、構成が複雑になるのであまり使われません。
 一番下の例はPolyFet の製作例などに見られる、同様な働きを期待したものと考えられます。プリントパターンで 1/4λのストリップラインを構成して25Ω側からGNDに接続しています。1/4λなのでインピーダンス的には中心周波数でハイインピーダンスになるため動作的には問題ありませんが、他の周波数 特にMOS-FETなどがゲインが上がりやすい低周波ではショートする働きがあるので、低周波発振などには効果があると考えられます。また、セミリジッドでバランを作る際、ケーブルの下側のプリントパターンを削って避けなければなりませんが、この場合ストリップラインに半田付け出来るので、製作が簡単になるかと思われます。
ソフト的には
数MHz以下ではセミリジッドケーブルでは長すぎますので、トロイダルコアを使いますが、大出力ではコアが発熱したりするので注意が必要ですね。セミリジッドケーブルで広帯域にしたい場合などにもケーブルをフェライトコアに通して使います。


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コメント

バランの芯線側と被覆側では180°位相が違います。それでプッシュプルアンプの入力と出力では、通常は繋ぎを反対にします。
Nさんからメールで相談のあった、BLF546のデーターシートでは、セミリジッドケーブルが入力と出力で同じ方向に付いていますが、本来逆にすべきかと私も思います。

しかしながら、バランは 180°位相がずれるので 本来
 (入力)   (出力)
  0°  +AMP1+  180°
 180° +AMP2+   0°
でトータル180°ずつで合成時位相があうのが
BLF546のデーターシートのバラン配置では
 (入力)   (出力)
  0°  +AMP1+   0°
 180° +AMP2+ 180° = 360° = 0° 
と なり結果位相があうので
OKとしているのではないかと思います。

なぜ入出力逆にするかというのは、セミリジッドケーブルで作るバランでは、芯線側は直接内部導体を通じて信号が伝達されるのに比べ、外皮側はトランス効果の誘導で信号が伝達されるので、低い周波数では伝達ロスが多くなってしまい、周波数特性が悪くなってしまうからです。(トランスなので直流は伝わりませんよね)
 入力と出力で逆に使えば、トータルで低域のロスは1個分で済みますし、アンプも同じような周波数特性で動作できます。
 広帯域のアンプではこのような周波数特性のバラツキはシビアですが、比較的高い周波数の UHF 狭帯域のアンプではあまり問題にならないので、バランの向きは問題にしないのでしょう。
 逆に考えると、同じ方向で使うとすごく低い周波数ではバランの働きがなくなってケーブルとして片側のアンプだけでも動作できるので、パワーは少なくなっても出力したい場合には、それはそれで効果があるかも知れませんね。

投稿: SUDOTECK | 2011年1月 7日 (金) 10時36分

毎度お世話になっています。  (._.)アリガト

Balunの3番目の図ですが、初めて見たのは NXP社BLF368のカタログでした。


実は、この方法について疑問が有りますので、お教え頂ければ幸いです。

セミリジットケーブルの誘電体はテフロンですが、基板は通常 エポキシです。
短縮率が異なるのでセミリジットケーブルの長さと、 PCB上のGNDパターン長は
異なると思うのですが 、カタログの例では GNDの上に セミリジットケーブルを
這わせていますが、大丈夫なのでしょうか?
さらに、セミリジットケーブルの下のλ/4のGNDパターンは必要ないのでは?

投稿: Maeda | 2011年1月 7日 (金) 12時03分

BLF368で探したデーターシートではバランの向きはちゃんと入出力で逆になってますね。
 部品表下のNotesの中で
2. The striplines L1, L3 to L11, L16 to L22 and L24 are on a double copper-clad printed circuit board with glass microfibre PTFE dielectric (εr = 2.2); thickness 1⁄16 inch; thickness of copper sheet 2 × 35μm
とありまして、基板もPTFEですね。長さが短めだけど、ほぼ同じと考えてよいのでしょう。
 私も実際にバラン下にパターンを作ったことはないので?です。テフロン基板で作ることもあまりないので、ガラエポだと確かに長さが変わりますよね。でも周波数がそのあたり少々違っても帯域外インピーダンスを下げるには役にたつかも..

投稿: SUDOTECK | 2011年1月 7日 (金) 16時38分

お答え頂き、有難うございます。

ウッカリしておりました。
εr = 4.3 と思っていましたが、εr = 2.2 だったのですね。

波長短縮率は比誘電率の√で効きます(√でしか効果が有りません)ので、
誤差は少ないと思います。

しかし、わざわざセミリジットケーブルの下にパターンを引かなくても?


有難うございました。 o(_ _)o ペコッ

投稿: Maeda | 2011年1月10日 (月) 21時49分

4/λ1Lineがバランとして機能する原理を追加記述していただけないでしょうか?図を見る限り同軸ケーブルの延長のようにしか見えなくて平衡になる理由が判りません。λ/4Uバランと違って1:1ということですか?

投稿: YS | 2020年10月24日 (土) 22時03分

上記の λ/4 の図は入力側の外皮シールド側が、全体のGND になります。
 そして、出力側の2本(外皮側と内部芯線)がそれぞれ、入力側のGNDに対して 25Ωとなります。おっしゃるとおり、同軸なので出力側も外皮と芯線とはインピーダンスは 50Ωとなっています。( 25Ωはあくまで入力側のGNDに対してです)このようなパターンは、プリント基板の裏側面をベタGNDとして回路作成するので、裏側とこの出力側を見ると 外皮と芯線はそれぞれ 180°位相が違った 25Ωのインピーダンスを持つ信号として取り出されてます。

投稿: SUDOTECK | 2020年10月25日 (日) 21時08分

ありがとうございます。

つまり、給電端の裏側のベタパターンは同軸入力側のGNDに接ながっていて、PWB上でシュペルトップバランを形成している訳ですね。Uバランのλ/2が邪魔して混乱してました。

投稿: YS | 2020年10月26日 (月) 01時07分

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