ドループのはなし
ドループとは
[droop]で一般的にはホールド・キャパシタやバッファ・アンプなどのリーク電流によるホールド電圧の変化をいいますが、今回はRFアンプデバイスの発熱による短時間でのパワーが減少する変化を考えます。
ハード的には
最近の高効率アンプやAB級などのRFアンプでは、パルス信号やバースト波を増幅する際、従来の GaAsデバイスでA級使用していた時と全く異なる現象が発生しました。
特に GaN -HEMTなど小型にもかかわらず単位面積あたりで大きなパワーを出すことが出来、使用温度も250℃など小さいチップサイズで使われるデバイスではその現象が顕著でした。それは2点ありました。
1点目はデバイスが冷えている状態(小さいパワーの時あるいはドレイン電圧をOFFしている時)からONにした時に瞬間的にチップが暖まりゲイン下がる現象です。パワーが小さい時に発熱が少なく、その温度ではゲインが高いため初めの50nS程度はヒゲのようにパワーが出てしまうのです。これは数100nSのパルスを増幅するアンプでは苦労しました。結局パルス発生器のほうでゲインを補正してややなだらかな立ち上がりにするしかありませんでした。
2点目はデバイス全体が暖まってくると熱的にゲイン・ピークパワーが徐々に劣化してくる現象です。これは数10〜数100mSという長い時間ですから、信号発生器のゲインコントロールで修正できますが、性能的にピークパワーぎりぎりでは3次歪みの増大を招きますので、最終的にはデジタルプリディストーターの設定にこの熱的・時間的変化の項目を取り込んで補正するしかないと考えました。アナログのプリディストーターでは対応に限界があり、この問題から WiMaxなどの時分割信号への高効率アンプ開発は終息しました。
ソフト的には
パルス信号などはスペアナで見る場合、IF帯域幅の制限から高速な立ち上がり波形を観測することは出来ません。1GHz程度の帯域のデジタルストレージオシロがあれば、ミキサー(DBMなど)とSGを使って周波数を500MHz台に落として観測するのが一番ですね。その際はミキサのローカル注入レベルや入出力飽和特性など確認の上測定するようにしましょう。
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