熱雑音のはなし
熱雑音とは
抵抗体の中電子の不規則な熱振動によって生じる雑音のことをいいます。
ハード的には
とにかく抵抗器でなくても配線導線や半導体の内部抵抗など、電流が流れる部分ではそこにある電子が動いているわけですから、その動きが雑音電流を生じてノイズが出ています。これは絶対零度になれば無くなるはずですね。この雑音のレベルはどれくらいでしょう?Wikiによると抵抗体内で発生する雑音の電圧Vn[V]、電流In[A]は次式のようです。ここでk はボルツマン定数、Tは導体の温度(K)、Δfは帯域幅(Hz)、Rは抵抗値(Ω)です。高周波では電力で表されますので、電力は
Pn = 4kTΔf
と表されます。この式をもっと現実的に dBm で表した換算式は
で示されます。例えば、スペクトラムアナライザーで RBW = 1000,000Hz ( 1MHz )で測定したならば、
Pn = -174dBm + 10Log( 1000000 ) = -174dBm + 60 = -114dBm
となり、理論上では スペアナのノイズフロアは -114dBmと測定されるはずですが、スペアナの能力によって誤差が生じます。
測定例として NF=3dB Gain 40dB のアンプの入力を 50Ωで終端して、出力ノイズを測定するとします。入力は熱雑音だけと仮定して上記と同様にスペアナで測定すれば
-114dBm + 40dBm(Gain) + 3dB(NF) = -71dBm と測定されるはずです。もしこれ以上になれば、測定系が問題なければ、アンプのNFが実際は悪いのではと考えられます。注意点として測定にはスペアナの設定はピーク検波でなく平均電力が測定できるような設定で行いましょう。
ソフト的には
上記電力換算でのノイズ測定は一定の50Ωで測定・比較する高周波では有効ですが、オペアンプ回路など入出力でインピーダンスが異なる回路では、注意が必要です。増幅率を決める帰還抵抗やバイアス用の電圧オフセット用抵抗など、高い抵抗値になる場合には最初の Vn を評価してノイズ量が大きくならないように相対的に小さな抵抗値を使う必要も出てきます。特に最近 1GHzもの帯域をもつOPアンプなどは出力帯域幅が広いので Δf の値が大きくなるので、オシロスコープなどで見る出力ノイズレベルも大きくなってしまいます。ノイズ対策には必要な帯域にフィルタリングすることも重要です。
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