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2010年6月28日 (月)

APDのはなし

APDとは
[Analog Pre Distorter ] アナログ式前置歪み発生器です。RFアンプのリニアリティを改善するため、終段アンプの歪み特性と逆の特性の歪み発生器を前段において歪みを打ち消す役割の回路です。
ハード的には
Apd右図はダイオードを使ったAPD回路の一例です。ダイオードの非直線性を利用してONするぎりぎり付近にバイアスしておきますと、入力に高周波が入ってきた場合に小さなレベルの信号の時はダイオードに流れず、上側のリニア伝送回路で信号が伝達されます。出力が飽和してくるような大きなレベルの信号が入力されますと、ダイオードが高周波で多くバイアスされるためダイオードを通して信号が通過し、出力にはリニア伝送とダイオードの伝送信号が合成され、補正するための信号となります。
 APDは信号の歪み成分とリニア成分の相対的大きさの比が終段のアンプの歪み特性とピッタリ合わないと歪みは改善されません。このとき歪み成分を生成する時に必ず何らかの遅延で位相が狂ってしまい、リニア信号と合成するのにうまく合成できなくなります。上図は比較的広帯域に利用できる回路ですが、WCDMA信号などに対して歪み改善効果は4〜8dB程度です。
Apd2
上図は比較的狭い範囲で歪信号をつくるのに90°ハイブリッドなどを使って入力信号を分配する方式のものです。アンプで信号を増幅してダイオードに加えるなどした後、レベルや位相を合わせ、再度90°ハイブリッドで合成する回路を使い15〜20dB程度も改善される実績もあります。アンプやATTなどを通すため遅延が大きくなるので、リニアラインはセミリジッドケーブルなどをつかってディレイラインを構成します。
ソフト的には
 ダイオードなどで歪みを発生させる場合、温度などによって歪みの大きさやバイアス点などがずれてしまいます。温度でバイアス電圧を補償するなどして安定度を向上させる必要がありますが、他の項で紹介したBIASコントローラーなどが便利です。

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