プッシュプルAMPのはなし
プッシュプルAMPとは
[Push-Pull AMP]で出力ラインをPush(電流を流し出す)するデバイスとPull(電流を引き込む)デバイスで構成して必要な時に片方ずつ動作させることでA級動作のアンプなどにくらべ効率を上げた回路のアンプです。
ハード的には
プッシュプル回路はオーディオでは出力にコンプリメンタリのトランジスタを使って構成する場合が多いですが、高周波のアンプの場合はセミリジッドケーブルなどを使ったトランス(バラン)で同じ極性のFETを2個使ってプッシュプル回路を構成します。右図に示すように高周波アンプ用デバイスでは1つのデバイスに2個のFETが内蔵され、プッシュプルで使うのが前提になっているのが多く見られます。それはプッシュプルで180°違った信号を合成することによって偶数時の高調波を打ち消す効果を期待しています。また、セミリジッドケーブルでのトランスによって2つの信号に分ける際にインピーダンスを1/2に変換する効果で高出力デバイスの低い入出力インピーダンスにマッチングさせるのに有利に働くからです。図でセミリジッドケーブルの向きに注意してください。中心導体側に分けられた信号はFETのゲートに入り増幅されたドレイン出力は合成時にトランスの外皮側に接続されます。(ここでは説明のため直流カットのコンデンサーを省略してあります) プッシュプルアンプの場合は両方のFET のドレイン電流を同じようにしてバランスをとります。そのためゲートバイアスは片方づつ個別に調整できるようにするのが良いでしょう。
ソフト的には
小信号のアンプではバランを使わずに90°ハイブリッドで2つのアンプを合成する場合がありますが、その場合はプッシュプルでなく、単なる合成アンプとなります。最近では90°位相を変えた信号を使い、かつ片方のデバイスの動作点をC級(ピーク信号時のみ働く動作)近くにして出力合成回路を工夫して高効率をめざしたドハティ回路なども使われていますが、あくまでバランなどで180°位相の違った信号を合成するのがプッシュプルアンプです。
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