MOS-FETのドライブのはなし
MOS-FETのドライブとは
ゲートをドライブするノウハウです。パワーMOS-FETでは切り替えスピードが200nS程度は取れるはずなのに、実際にドライブしてみると1uSもかかってしまうこともしばしばです。
ハード的には
右図のように通常トランジスタでコレクタにプルアップ抵抗を付けてゲート保護抵抗を付けてドライブします。ここで問題なのがMOS-FETのゲート入力容量が大きいことです。ドレイン電流 15AクラスのFETではこの入力容量 Cissは 2000PFもあります。 これでは立ち上がり時に(R1+R2)xCiss の時定数、立ち下がり時には R2xCissの時定数がかかってしまいます。
これを改善させるには下のように CMOSコンプリメンタリ出力でドライブします。これならば出力電圧のスイングをほぼ電源電圧でスイッチでき、例えばCMOSゲートICを並列接続して出力電流を増やせばR3を数十Ω程度まで下げられるので、高速にCissのチャージ・ディスチャージを行うことが出来ます。また、OFF時間をさらに改善したい場合にはR3に並列にダイオードを付けてGate-OFFを高速にすることが出来ます。
他にCQ出版社のパワーMOS FET活用の基礎と実際にも詳しく記載されていますが、実際にはゲートとドレインの間のコンデンサCgdも重要な働きをして、しかもドレイン電圧によって容量が変化することから、ダイナミックに負荷が変動する負荷に対しては特に注意が必要です。
ソフト的には
ゲートに大容量のコンデンサがあることを前提に、MOS-FETのスイッチングを考えることは必要です。バイポーラトランジスタよりも FETはOFFになる時間が早いですが、それにはドライブ回路の工夫が必要です。特にP-CH FETと N-CH FETでプッシュプルで制御する場合、高速を求めると短時間でも両方 ON状態の期間が出来てしまいます。切り替え周期に対してこの両方ON期間が短ければ FET の熱損失は大きくないですが、ノイズなどで誤動作時に熱損失で破壊されることがありますので注意が必要です。
参考図書------------------------------------------------------------------
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コメント
FETドライバのHIP4080と74HC04を用いた方形波発振回路を用いて,方形波インバータを製作しました.しかし,息詰まってます….
周波数が低い場合は入力電流値が低いのですが,周波数が高くなるに従って入力電流値も高くなります.周波数は数十kHz~数百kHz,電流値は 0.3A~.単純に手動でIN-に+5V,GNDを入力した場合,正しいOUTPUTを出し入力電流値も0.1Aも流れていませんでした.
おそらく,入力容量Cissが大きいことが原因でゲートへ大電流が流れているのではと助言をいただきました.Cissの小さなFETを選定しなおすほかに改善方法はないでしょうか?
端的で分かりにくいとは思いますが,解決策,アドバイスなんでもよろしくお願いします.
投稿: 犬鷲 | 2010年8月12日 (木) 01時56分
電流値0.3A~というのはFETのドライバ電源でしょうか?Cissの影響でも数100KHzでゲートに0.2Aも流れるのはちょっと考えられません。
1)ゲートソース間にコンデンサを追加してみて症状がさらに悪くなるかを確認する
2)ゲートに直列に抵抗を入れている場合、その値を変えてみる(4.7Ω〜470Ωぐらいかな)
全体の電流をさしているならば、FETをプッシュプルで動作させている場合に、片方のOFFが遅くて両方のFETがONになる時間がありませんか?その切り替え時に電流が流れるので、周波数と正比例して電流が増えるので判りやすいかとおもいます。
3)インバーターなどではそれを避けるためにデッドタイムといって切り替え時にONしているFETを先にOFFするタイミングを作ってこの両方ONになる時間をなくしています。具体的にはONにするタイミングを遅くするため抵抗とコンデンサーで遅延回路(R直列+CをGND)で遅らせた信号と正規の信号のANDをとった信号を各々のゲートに入力します。
4)もしくはFETのゲートソース間に出来るだけ小さな抵抗を入れます。これによってCissの充電した電荷を放電しやすくします。
5)HIP4080のデーターシートを見ますと、Delay用の設定抵抗がありますね。これを替えてみましたか?
6)FETへのゲート抵抗が大きすぎることはありませんか?
投稿: SUDOTECK | 2010年8月12日 (木) 06時51分
早速のアドバイスありがとうございます.
アドバイスを見させていただくと,もしかしたらデッドタイムかも…と思います.デッドタイムを設定する抵抗値を10kΩにしています.つまり規格書だとデッドタイム0秒です….
とにかく,アドバイスに従い全て試したいと思います.結果が分かり次第またコメントをいただくと思いますが,その時はよろしくお願いします.
投稿: 犬鷲 | 2010年8月12日 (木) 10時08分
一通り試してみました.
1)10μFのセラミックコンデンサを入れてみましたが,相変わらずでした.
2,3,5)ゲートには100Ωの抵抗を初めから入れていたので,デッドタイム調整用の抵抗を100kΩにしましたが,変化なし…
4)まだ試していません.入れる抵抗は何W何Ωにすればいいのでしょうか?
6)ゲートには100Ωの抵抗を入れています.
言い忘れていましたが,私がいう電流値は電源である直流安定化電源に示される電流値のことであり,ゲートにこれだけの電流が流れているという確証はありません.Hブリッジインバータの負荷部には波形観測のためにオシロスコープがつながっています.
思惑に反して上手くいきませんでした….言葉で分かり肉用であれば,メールで回路図を送ってもよろしいでしょうか?
投稿: 犬鷲 | 2010年8月13日 (金) 01時00分
1)で 10uFも入れたらば出力がおかしくなりませんか?(普通出力スイッチングがなまってしまうかと思います)
全体で0.1Aとなると負荷はほとんど付いていないのでは無いでしょうか?正常な負荷を付けた状態で測定していますか?
正常な負荷を付けないでオープンの状態ですと、ほとんどC成分になりますので周波数によって電流が増えてしまします。
明日から旅行で時間が取れないかもしれませんが、回路図を送って見てください。
とりあえずセメント抵抗などで負荷を付けて実験してみてはどうでしょう?
投稿: SUDOTECK | 2010年8月13日 (金) 16時02分
以前使用していたFETドライバを用いてHブリッジインバータを作りました.
以前はゲート抵抗を10Ωでしたが,なかったので100Ωをつけました.なんと,同じ現象が起きました.ゲート抵抗を10Ωに変えたら大電流が流れることなく動作しました.
まだ,HIP4080では試していませんが,10Ωの抵抗に変えたらもしかしたら…
試してみます!
投稿: 犬鷲 | 2010年8月14日 (土) 00時40分
その後メールでも連絡がありませんが、いかがでしょうか?
ゲート抵抗が大きかったので、FETがOFFするタイミングが遅くなって、両方ONになるタイミングが大きかったということですかね。
うまくいきそうみたいですね。
投稿: SUDOTECK | 2010年8月23日 (月) 11時06分
その後別のことをやっていて返信できませんでした.すみませんでした….
ゲート抵抗10,5Ωでだめでした….そこで駄目もとでゲート抵抗を外した結果上手くいきました.でもこれでいいのでしょうか?
次はデッドタイム用の抵抗を調整していきたいと思います.
投稿: 犬鷲 | 2010年11月12日 (金) 22時31分
HIP4080のデーターシートのボード例では 10Ωになっていましたが、それ以前の回路は特にゲート抵抗の指示はありませんので問題はないかと思います。デッドタイムを調整すれば 10Ωでうまくいくかも知れませんね。
投稿: SUDOTECK | 2010年11月12日 (金) 22時59分