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2010年3月25日 (木)

PLLのはなし

PLLとは
Phase Lock Loop といってある固定の周波数(実際は水晶を使った発振器)と VCO(voltage controlled oscillator )電圧制御発振器を使って安定な周波数を作り出すしくみ。携帯の電波を送信したり受信したりするのにも使われているし、テレビやラジオなど選局するしくみの中心をなすもの。
ハード的には
Pll
 現在は1つのICにPLL部とVCOも入ってしまっている物も多く存在します。携帯用では送信・受信だけでなく携帯の使用周波数帯 800MHzとか2GHz帯とかを複数使うため、多くの機能をもったIC が作られています。基準発振器は 10MHz程度の水晶発振器を用います。最近の水晶は温度に対して安定な様に作られていますので、携帯のように数GHzでも問題なく使えるようになってきました。この基準発振器をリファレンスデバイダと呼ばれる周波数分周器を使って希望周波数ステップ(間隔)になるように設定します。例えば 基準周波数が10MHzで100KHz ステップにしたい場合は分周は100となります。そしてVCOに設定したい周波数からこのステップ周波数にするのが、もう1つの周波数分周器コントロールデバイダーです。例えばVCO周波数を1,900MHzにしたい場合はこの分周器を100KHzとの分周比 1900(MHz)÷0.1(MHz)=19000 となり、19,000をコントロールデバイダに設定します。
 PLLはこの2つの分周された 100KHz の信号を比較する位相比較器を持っています。この比較器によってVCOに周波数のずれを伝えることにより常に正しい周波数にロックする機能を実現しています。
このVCOにズレを出力する回路にはフィルタリング回路(ループフィルタ)やアンプ回路を用いて高速にしかもロック時には雑音が少なくなるような電圧制御コントロールが必要です。
 またVCOの位相ノイズを低減させるために電源回路にリップルフィルタ回路を追加したり(単なる定電圧回路ではだめです)、外部電流の影響を避けるためにGNDパターンを分離するなどの実装上での工夫も必要です。
ソフト的には
 上記リファレンスデバイダ、コントロールデバイダに加え、位相比較器の極性やロック検出端子の出力方法などを制御するレジスタも用意されています。PLL IC は通常高周波雑音が出ないようにマイコン部分とは離されるので、通常の高速バスでは制御せず、I2Cや3線式のシリアルコントロールで制御されるのが通常です。そのための設定方法ではICによってどのレジスタから設定するかどのタイミングで設定が反映されるか規定されていますので、そのあたりは注意が必要です。
このレジスタには位相比較器の出力電流などを変えてロックした後に位相ノイズ特性を良くするような事も出来ますので、周波数変化スピードを重視するのか、ロック後のノイズ特性を重視するのかでこれらチャージポンプ関連の設定は重要です。(実験時は最大・最速に設定しても良いでしょう)
 通常コントロールするためにレジスタにアクセスしてから、PLLの動作が完了するまで最低数mSはかかりますので、ソフト的には単なる時間待ちでロックを確認するのでなく、設定が終わったらフラグを立てて確認待ち状態にして、メインループ等で時間を待った後にロックを確認し、異常があった場合再度レジスタを設定し直すなどの対応が必要です。また、電源立ち上げ直後の周波数設定をどうするかなど(早く設定しないとVCOがロックが外れた状態でふらふらしてしまい、妨害電波を出す可能性もあります)注意が必要です。


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